2018/5/16

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次のグラフは、価格が上昇し始めた13年1月以降の売り出し単価、成約単価と成約日数の推移を示したものです。このグラフをみると、13年1月の成約日数は96日です。成約までに3カ月以上かかるのは不動産業界では日数がかかりすぎだと認識します。

東日本不動産流通機構「市況データ」より筆者作成

日数がかかりすぎるのは、一般的に売り出し価格が実勢から大きく離れていることが主因とされていますが、この時期は売り主や不動産業者が強気の値付けができない心理状態がまだ続いており、結果として売り出し価格と成約価格との差は5%程度しか開かなかったのでしょう。成約価格の上昇トレンドと同じような売り出し価格となっています。

15年夏以降、在庫が急増

成約日数は13年7月に69日まで短くなり、その後は上下動を繰り返しながら、14年9月から一気に55日まで短くなります。2カ月足らずで成約するということは「需要が旺盛である」ことを示しています。これを受けて、売り主も不動産業者も強気に値付けができる環境になり、売り出し価格は14年9月からそれまで以上の勢いで上昇していきます。

成約日数は15年12月までは60日を切る水準が続きますが、同じ時期の売り出し価格が1平方メートル当たり76.7万円に対し、成約価格は69.0万円とその差が11%にまで広がってしまいます。

先にも述べたように、15年夏以降は在庫が急増します。強気で売り出す物件が急増したため、売り出し価格が上昇した割に成約価格は上昇しなかったのです。

価格トレンドは転換のタイミングに?

15年12月以降は在庫の高止まりもあって成約日数が上昇を続け、18年3月には79日までに達しました。つまり、売り主や不動産業者はこれまで通りの強気な値付けが徐々にできない心理状態になってきているのです。その結果、売り出し価格は15年12月以降、大きな上昇を示さず横ばいに近い状態になったと考えられます。

売り出し価格は横ばいですが、低金利のおかげで成約価格は同じ調子で上昇を続けていますので、18年3月には成約価格は1平方メートル当たり78.2万円に対し、売り出し価格は同80.2万円とその差は3%までに縮小しています。

こうなると、売り出し価格がさらに上昇しない限り成約価格が上昇することはなさそうです。つまり、在庫がこのまま高止まりを続け、成約日数も長期化傾向が続いて90日前後に近くなったとき、23区の中古マンション価格トレンドは転換のタイミングに入っているかもしれません。

今後の成約日数には注目しておきたいところです。

田中歩
 1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション(住宅診断)付き住宅売買コンサルティング仲介などを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」に参画。