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女性活躍推進はまやかしか 欠落する人権と統治の視点 セクハラ対策は企業経営への試金石になる

2018/5/14

写真はイメージ=PIXTA

 財務省元次官のセクハラ問題が尾を引いている。政財界リーダーによる発言が物議をかもす中で浮かび上がってきたのは、セクハラが人権問題であり、ガバナンス(統治)上の問題であるという視点が欠落していることだ。世を挙げて旗振りをしてきたはずの「女性活躍推進」はまやかしだったのだろうか。

◇  ◇  ◇

 連休中の5月4日、NHK「ニュースウオッチ9ホリデー」のセクハラ特集で今井純子解説委員があるエピソードを紹介した。

 「ある企業の決算発表で、女性記者がセクハラ対策を尋ねたところ、その場にいた男性記者やアナリストから笑いがもれた」

 「重要な」決算発表という場で、「いま一時的に盛り上がっている」セクハラ問題などを持ち出すとは笑ってしまう、経営の本質には関係ないと考える人たちが少なからずいるということだ。セクハラ対策はガバナンスの問題であることがいかに軽視されているかの証左だろう。

■多様な人材の確保と業績向上に直結するセクハラ対策

 あらゆる組織において、セクハラ対策はガバナンスのあり方、そして人権尊重の姿勢を測る試金石となる。女性活躍推進の旗振りがなされる中、その取り組みが本物か、まやかしかは、セクハラの対応に端的に表れる。理由は大きく2つある。

 まず、企業はセクハラの対応を誤れば優秀な人材を失いかねない。報道機関でも過去に、女性記者がセクハラを訴え出たことで報道現場から外された、退職を余儀なくされたという事例はある。「女性記者が辞めても、代わりとなる男性記者はいくらでもいる」という発想があるかもしれない。確かにかつての報道現場は男性ばかりだった。しかし今、社会構造がかつての「男性が稼ぎ主」の時代から大きく変わり、ライフスタイルが多様化する中、伝える側にもまた多様性が求められるようになっている。

 報道現場で働く女性は徐々に増え、今では約2割に及ぶ。女性が増えるにつれて、報道の視点は確実に広がりを見せている。女性が安心して働くことができる職場環境づくりは、報道機関にとって生命線といっていい。かつてのように男性ばかりの現場では、多様な読者や視聴者の「知りたいこと」にもはや応えられないからだ。

 これは、マスメディアの世界に限る話ではない。職場で性別や国籍に関係なく多様な人が働くことが、社会の変化に応える商品やサービスを生み出すことにつながるという事情は、どの職場にも共通する。優秀な人材、多様な人材の確保のためにも、適切なセクハラ対策は企業にとって不可欠といえる。

 第二に、「精神的に安心できる職場」はトラブルのリスクを抑え、業績向上にもつながる。労働政策研究・研修機構の2016年調査によると、職場に「お互いに助け合う風土」があり「意見が言いやすい風通しのよい環境」であると、セクハラの発生率は低くなる。さらに職場の長が「業務分担等について良くマネジメント」していることも歯止めになる。

 精神的に安心できる職場は、リスクを抑えるにとどまらず、業績向上にも直結する。グーグルの社内調査によると、上司や同僚に何でも相談できる、何を言っても受けとめてもらえるという「心理的安全性(サイコロジカル・セーフティー)」のある部門は、そうでない職場に比べて明らかに「パフォーマンス(業績)が高い」というデータが出ている。

 セクハラ対策が多様な人材の確保と生産性向上におおいに関連することからも、重要なガバナンスの問題といえるだろう。こう考えると、冒頭の決算発表時の女性記者の質問が、いかに的を射たものであるかが分かる。

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