ネットで受付、宅配クリーニング 利便性の向上に挑戦
ホワイトプラス 社長 井下孝之氏
クリーニングといえば、店舗へ洋服を持ち込み、洗濯が終わったら引き取りに行くのが一般的。この「常識」にIT(情報技術)で挑戦、インターネットを使った宅配クリーニング「リネット」を運営するのがホワイトプラス(東京・品川)だ。井下孝之社長に事業の狙いと特徴を聞いた。
――サービスを始めたきっかけは何ですか。
「世の中がネットでどんどん便利になっていくのに、なぜかクリーニングはネット化されていません。週末にクリーニング店に行くと、並ぶことが多いですよね。その時間がすごくもったいなく思え、ネットで利用できるようにしようと考えました」
――リネットの特徴は何ですか。
「最大の特徴はネットで注文できること。ネットでモノを買うのと同じように、スマホで注文すれば、予約した時間に引き取り、指定した時間に仕上がった洗濯物が届きます。日々、忙しい人の味方となるサービスです」
■目指すはスターバックス
――リネットの目標を教えてください。
「世界観になりますが、スターバックスやレッドブルのようなブランドを目指しています。例えば、スターバックスが日本に来るまでは『喫茶店』という言い方しかなかったですよね? カフェでおしゃれにくつろぐという発想はなかった(笑)。スターバックスがそこを変えたように、リネットもクリーニングの概念を変えていきたいと思っています」
「クリーニングにはやや古臭いイメージがあるように思えます。でも、クリーニングされた服を着ると、気分が良くなるし、自信もつきますよね。クリーニングを楽しい体験だと、しっかり認識されるようにしたいと思っています」
――具体的な取り組みを教えてください。
「クリーニングに要していた時間を自由にするのはもちろん、コストがかかりますが集荷には白い段ボールを採用しています。ほかにも、クリーニングについてのラジオ番組を持つなど、さまざまな取り組みを進めています」
「正直、費用対効果だけで判断すれば、やらないと思います。ラジオも費用対効果は全く分からないですし、ロゴもリニューアルしておしゃれにしましたが、どれだけ効果があるか分からない(笑)。ただ、顧客に気持ち良い体験をしてほしいんですよね。『リネットを使って良かった』と思ってもらうためには、やはりこういうことは大事です」
■お気に入りをもっと着たくなるサービスに
「お気に入りの服を着るとテンションが上がる。そうした服による高揚感を長持ちさせることが、クリーニングの本質的な価値だと思います。我々の目標は、そのお気に入りの服をもっと着たくなるサービスにしていくことです」
――どのような取り組みを進めていますか。
「例えば、クリーニングに出された全ての服に『プレミアム仕上げ』を行っています。この際、服の肌触りがよみがえる『リファイン加工』を施しています。ささくれだった繊維1本1本をコーティングすることで、服の質感を取り戻し、あでやかになります。料金は無料です。服を長持ちさせてほしい、お気に入りをもっと着てほしいとの思いからです」
「集配でも顧客の利便性を高めています。4月に正式リリースした『プレミアム便』は、東京都23区を対象(集荷は10区限定)に午前6時から10時、午後9時から午前零時までの間、1時間幅で集配の時間を指定でき、翌日届けもできるというサービスです」
「受取人が指定した場所に配達した荷物を置いていく『置き配』を手がけるソフトバンクグループの配送会社、マジカルムーブ(東京・港)が提供する早朝深夜の配達サービスを活用しました。さらに、リネットのネット専門工場があり、システムを内製していることで、ようやく実現できたサービスです」
「他にも、通販サイトやセレクトショップなどと手を組み、洋服を購入した顧客にリネットのクーポンを提供する『アパレルケアプログラム』にも取り組んでいます。結果として、DM(ダイレクトメール)の5倍の効果がありました」
――今後、目指すところを教えてください。
「経営陣以下全員、良いサービスをつくりたいという思いを持ってやっています。我々のサービスを利用してもらうことで、服と共に人生を楽しんでいただけるとうれしいです」
1982年生まれ。2005年神戸大工学部卒、同大学院自然科学研究科に進学。在学中の06年7月、介護・医療業界向けの人材紹介などを手掛けるエス・エム・エスに採用が決まると、大学院を中退。09年3月に退社し、7月にホワイトプラスを設立。大阪府出身。
《会社概要》
社名:ホワイトプラス 設立:2009年7月 所在地:東京都品川区 資本金:7億2950万円(資本準備金含む) 事業内容:インターネット完結クリーニングサービス「リネット」の企画・開発・運営 リネット会員数:30万人(2018年5月時点)
文:FACY編集部 岩崎佑哉(https://facy.jp/) 写真:加藤潤
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