2018/5/19

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もし煮豆が床に敷いた稲ワラの上にこぼれたとしたら、煮豆には稲ワラをすみかとする納豆菌がつきます。竪穴住居の適度な暖かさが一種の発酵室のようになり、納豆が誕生したとしても不思議ではありません。

馬のエサを人間が食べた!?

納豆の誕生には、平安時代後期の武将、源義家が関連しているという説もあります。現在の東北地方へ遠征した義家は、前九年合戦、後三年合戦で安倍氏、清原氏を討伐しました。これがきっかけとなり東北地方を中心に、義家と納豆誕生に関する逸話がいろいろと残っています。

当時の戦いには、馬が欠かせませんでした。その馬の飼料は大豆でした。義家は大豆を煮て乾燥させ、俵に詰めて遠征に持っていきました。

後三年合戦で敵の清原家衝が金沢柵(かなざわのき)に立てこもり、戦いが長引いてしまいました。馬の飼料である大豆が不足してしまったため、義家は急きょ、農民に大豆を提供させました。しかし、急いでいたこともあって、農民は煮た大豆をあまり冷まさずに熱いまま俵に詰めて差し出したそうです。

すると、数日たって煮豆は臭いを発し、糸を引いていました。この煮豆を食べてみるとおいしかったことから、馬ではなく兵たちの食料になったという説です。

ワラに包むのは日本発の製法

記録上、納豆が登場するのは、平安後期に書かれたとされる藤原明衡の『新猿楽記』に、好きな食べ物として「塩辛納豆」と記載されたのが最初のようです。

納豆は大別すると「糸引き納豆」「五斗納豆」「寺納豆」の3種類があります。

●糸引き納豆……蒸した大豆に納豆菌を加えて発酵させたもので、もっとも一般的な納豆。

●五斗納豆……糸引き納豆に米麹と塩を加えて発酵させたもので、山形県米沢地方の郷土食。「雪割納豆」とも呼ばれる。

●寺納豆……大豆から麹(こうじ)を作って塩水につけ、数カ月熟成させてから乾燥させたもの。「塩辛納豆」とも呼ばれる。

なお、中国には北京語で「豆」と呼ばれる食べ物があります。色は黒く、塩気が効いており、臭いは味噌風ですが、味や香りはさまざまです。この豆は、寺納豆にかなり近いものです。また、ネパールの「キネマ」やインドの「バーリュ」などは、糸引き納豆に似ています。

中国にも蒸した大豆を包んで作る糸引き納豆があり、それが伝わったという説もあります。ただ、ワラに包むという製法は、日本で発明されたものとされています。