2018/5/10

また、任意後見監督人の請求をしない限り、後見が始まらないことを悪用した事例が出てきています。つまり、まず任意後見契約を結んで安心させたうえで、実際には本人の判断能力が低下しても家裁に任意後見監督人選任の請求をせず、すでに判断能力が不十分となっている本人に高額の投資をさせるとなどの被害が報告されているのです。

任意後見が始まるまでの間に定期的に本人と電話連絡や面談を行い、本人の健康状態や生活状況を確認する「見守り契約」をあわせて締結する場合がありますが、これも受任者に悪意があればあまり効果はありません。このため、任意後見人予定者には信頼できる人を選任することが不可欠です。

弁護士などの専門職であれば一応、信頼性は高いはずですが、恥ずかしながら最近は不祥事を起こす者もいます。どこの弁護士会でもだいたい成年後見や高齢者に関するセンターを設置しています。そこに所属している弁護士であれば研修が義務付けられ、任意後見に関する知識やスキルを持っていて安心できるはずです。後見人予定者からは納得いくまで説明を受け、不安や疑問は払拭したうえで契約しましょう。

財産管理委任契約、「任せきり」にしない

さて、あなたは病弱で脚が弱っているとのこと。そうなると、銀行や役所へ出向いたりするのも大変になってきます。そこで任意後見契約と同時に「財産管理委任契約」を締結し、財産の管理を第三者に委任する方法があります。委任の内容は財産の管理、預金の引き出しなど金融機関との取引、年金の受け取り、生活費の支払い、不動産の権利証や通帳・印鑑登録カードの保管、医療費の支払いや管理などが考えられます。

しかし、列挙された委任内容の例をみると分かるように、これは委任者が人生そのものを他人に預けることにもなります。受任者に悪意がある場合、財産をほしいままに丸々処分されてしまう懸念もあります。任意後見契約と併用する場合には任意後見人予定者を財産管理委任契約の受任者とすることが多いのですが、この場合も信頼性の高い人に委任しなければなりません。

受任者には財産管理や事務処理に関する報告書と通帳などの写しを定期的に提出させるよう求めましょう。すべてを任せきりにしないことが肝要です。

志賀剛一
 志賀・飯田・岡田法律事務所所長。1961年生まれ、名古屋市出身。89年、東京弁護士会に登録。2001年港区虎ノ門に現事務所を設立。民・商事事件を中心に企業から個人まで幅広い事件を取り扱う。難しい言葉を使わず、わかりやすく説明することを心掛けている。08~11年は司法研修所の民事弁護教官として後進の指導も担当。趣味は「馬券派ではないロマン派の競馬」とラーメン食べ歩き。