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スイングするフリージャズの衝撃 ドラマー森山氏

ドラマー森山威男ジャズを語る(上)

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NIKKEI STYLE

1970年代前半に山下洋輔トリオで活躍したジャズドラマーの森山威男(たけお)氏が再び脚光を浴びている。一定のビートを感じさせないフリースタイルのドラム奏法が今の聴き手にも衝撃として伝わる。当時の奏法を分析した著書も出版した。フリージャズとは何だったのか。ジャズの基本スタイルのフォービートに回帰した今も息づく「スイングするフリー」の魅力を追った。

ピアニストの山下洋輔氏を中心とした「山下洋輔トリオ」はメンバー交代をしながら1966~83年に活動した。森山氏が山下トリオで活躍したのは初期の67~75年。74年には山下氏、森山氏、サックス奏者の坂田明氏の3人で西ドイツのメールス・ニュージャズフェスティバルに出演し、フリースタイルのドラム奏法が欧州で高く評価された。ビートに従属せず、大音量で音数多く、自由かつ感情の赴くままに数十分間たたき続ける森山氏のドラム。その圧倒的なエネルギーに欧州の聴衆は震え上がったという。

何拍子か分からない連打に衝撃のアクセント

しかし75年に山下トリオを退団して以降、森山氏は77年結成の「森山威男カルテット」などを通じてフォービートジャズに回帰した。異様な不協和音と爆音で駆け抜けた山下トリオ時代の森山氏のフリー奏法とは何か。熱烈なファンの一人、経済学者で東京大学名誉教授の松原隆一郎氏が監督・構成して1冊の本が生まれた。それが2017年12月初版発行の森山威男著「森山威男 スイングの核心」(ヤマハミュージックメディア)だ。

彼のフリー奏法を解析したDVD付きのこの本を見て聴いて読めば、森山氏のドラム演奏の現在を知りたくなる。そこで4月20日、岐阜県可児市在住の森山氏が横浜市でライブをするというので、現地に向かった。JR桜木町駅から数分歩くと、いくつもの小路に飲食店が並ぶ昔ながらの繁華街、宮川町にたどり着く。小さなビルの2階に有名なライブハウス「ジャズスポット ドルフィー」がある。リハーサルのため店内に入ってきた森山氏は人当たりのいい好好爺(こうこうや)といった感じ。しかしひとたびドラムを前にすると、変拍子の洪水のような強烈な連打を響かせる。彼のフリー奏法は健在と確信した。

「基本となるのは2と3の組み合わせ、5連音符の単位だ。(普通の4拍子や3拍子に聞こえないため)テンポがカウントしにくい。それがフリーには非常に適していた」と説明し、フリースタイルのビートのパターンをたたいてくれた。何拍子か分からず、ビートとも思えない連打。「それでもスイング感がある」と松原氏は指摘する。シンバルやバスドラムを加えていき、「ハイハットを衝撃の音として使う」と森山氏は言いながら苛烈なアクセントを加える。ジャズよりは交響曲に近い劇的で壮大なシンバル音。東京芸術大学音楽学部器楽科に在学中から山下トリオに参加し、進化していったフリー奏法について、リハーサルを前に森山氏にインタビューした。

 ――フリー奏法はどう生まれたか。

「最初に山下洋輔と始めたときは普通のフォービートの曲を演奏した。そのうちに、きちんとやるのがつまらなくなった。どんどん突っ走ってもいいということになり、ちゃんとビートを刻もうと思いながらも、自由にたたき始めた。ドラム全部の音を自然に鳴らそうと思ったが、1と2の組み合わせでたたくとはっきりテンポ感が出てしまい、速いか遅いかになってしまう。そこでテンポが見えないように自然にたたいていたら、2と3の組み合わせになり、しかもそれがずれて重なっていた。加えてバスドラムやハイハットをずっと鳴らし続ける練習もした」

感情が理性に打ち勝つのがフリースタイル

――山下トリオは海外遠征し、当時の西ドイツをはじめ欧州で高く評価された。理由は何だと思うか。

「圧倒的なパワー、エネルギーだったと思う。欧州や米国にもすごいエネルギーでやっているグループがいた。しかし演奏を始めて終わるまで20~30分間、途切れることなく圧倒的パワーがずっと続く演奏をしたグループはまずいない。みんな圧倒されていた。(フリー奏法が)30分も続くわけだからかなり衝撃的だ。自分で今聴いてもものすごい。もうやめるだろうと思っても、いつまでもやめないわけだから」

――ジャズに欠かせないはずのベースは不在。ピアノとサックスとドラムの3人編成も珍しかった。

「最初はベーシストもいた。でもベースというのはテンポをはっきり刻む楽器だ。だからテンポがはっきりしないフリースタイルにベースは不要。例えば、バスドラムの細かく低い音はベースとぶつかってしまいがちだ。そこである時点からまさにベースは要らないと思うようになり、ドラムの自分を取るかベースを取るかどっちかにしてくれとまで言って頼んだ」

――フリースタイルの奏法とは何か。

「理性に感情が打ち勝ってしまった奏法だ。音楽も感情ではなく理性で演奏している部分が非常に大きい。譜面に書いたり、テンポや音程があったり、一つの曲になっていて非常に理性的だ。考え抜いて美しいものを作っていく。だが感情が打ち勝つと、そういうのはどうでもよくなる。ジャズの一つの方向、こっちのほうだけを強力にデフォルメしていって、それ以外はもう無くてもいい。そうしてしまった非常に偏ったジャズがフリージャズだといえる」

 ――フリージャズを演奏する気分はどうか。

「夢中になれる。フォービートは夢中になるほど感情的にはならない。やはりある程度、理性的に曲として捉えている。しかし山下とのフリーの演奏では、曲として捉える意識が全くなかった。ボクシングみたいに、相手がこう来ると思ったら、さっとよける。譜面が頭に浮かぶことは全くなかった」

ロックに通じる圧倒的パワーと持続力と感情

「山下トリオでは、ピアノは和音が出せるとか、サックスは音を長く吹き伸ばせるとか、そういう楽器の特性をすべて犠牲にし、3人とも感情で演奏した。より高く、より強く、より速くのオリンピックではないが、より音数を増やし、より大きい音を出し、より速く弾くことが山下トリオ時代のテーマだった」

――フリーの演奏は体力的にも大変だったか。

「サックスの坂田明は大変だったと思う。坂田は『森山さんと山下さんが2人でガンガンにやり合っている。そこへ僕が入ると、自分も思いきり吹くしかない。どう吹いても後ろからあおられる』と言っていた。私は音数が多くても、平静は軽くステップを踏むようなたたき方をする。そこへ山下のピアノが食ってかかってくるので、アクセントを入れたり、やり合ったり。全体でみれば、3人とも100メートル走の勢いでマラソンまで走ってしまうような演奏だった」

人気も評価も絶頂だった75年に山下トリオを退団した理由について、森山氏は「仕事量も増え、体力的にも精神的にも限界を感じた」ことを挙げる。日欧で名をとどろかせ、次はジャズの故郷、米国を制覇するという段階だった。そのまま山下トリオを続けていたらどうなったか。「あれは分類するとしたらロックではなかったろうか」と森山氏は言う。「圧倒的なパワーと持続力、感情が完全に理性に打ち勝つ音楽はロック系の人たちにこそ分かりやすかったはずだ。爆発的に人気が出た気がする。ロックが口火を切った時代だったから」。森山氏のフリー奏法はジャズの枠組みも超えるほどの革新性を持っていた。そう感じさせる自負心あふれる答えだ。

ビートルズ解散後、レッド・ツェッペリンやディープ・パープルらハードロックが隆盛し、デビッド・ボウイがグラムロックを繰り広げ、その後にセックス・ピストルズらパンクロックが台頭してきた70年代。ジャズも従来の殻を打ち破ろうとフリースタイルが模索され、感情の爆発のような森山氏のドラムが脚光を浴びた。

それから40年以上を経た今、森山氏は若手奏者らとフォービートジャズを演奏し続けている。しかしそうしたジャズ演奏の中からも彼の凶暴性をはらんだフリー奏法の片りんが現在進行形として聞こえてくる。森山氏は「もう少し衝撃的な演奏を楽しんでいければと思っている」と言ってニヤリと笑う。後編では彼の奏法の源泉や今のジャズへの思い、ライブへの取り組みと方向性がいよいよ明らかになる。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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