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ブリーフ・長風呂…不妊を招きかねない男の習慣

男性不妊症の実態と治療法(前編)

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NIKKEI STYLE

「精子の数が減っている」という話を聞いて衝撃を受けたことがある人もいるのではないだろうか。最新の研究でも、不妊症につながる新たな精子のリスクが分かってきたという。精子を守る方法について、獨協医科大学埼玉医療センター泌尿器科・リプロダクションセンター准教授の小堀善友さんに聞いた。

数が減っているだけじゃない! 新たな精子のリスクとは?

精子の数が減っているというのは、本当だ。2017年に「欧米人男性の精液を約40年間調査した結果、精子濃度が52.4%、総精子数が59.3%減少した」という論文[注1]が海外で発表され、注目された。

「このデータにはアジア人の精液検査データは含まれていませんが、日本人も同様のトレンドをたどっている可能性は十分に考えられます。日本でも精巣の大きさが小さくなってきているという報告は以前からあり、小さくなれば精子は少なくなります」と小堀さんは言う。40年間で精子が半分になっているとは、由々しき事態だ。

精子が減少すれば、男性不妊症につながる。世界保健機関(WHO)の基準によれば、そもそも自然妊娠には以下の数値をクリアしていることが必要だ。

「ただし、これは自然妊娠に必要な『下限』です。これだけの結果があった人が1年間通常の性交渉をして妊娠する確率は5%」と小堀さんは注意を促す。この基準を満たしているからといって必ず妊娠に結びつくというわけではないし、この基準以下の場合、自然妊娠する確率は0%に近い。

さらに最近の研究で、精子の中には一見元気で問題なく見えても、妊娠に結びつく力が衰えているものがあることが分かってきた。

[注1]Human Reproduction Update. 2017;23(6):646-659.

「精子の頭の部分にあるDNAが損傷しているために、受精卵に細胞分裂を促す力がないものがあります。専門的にはフラグメンテーション(断片化)といいます。おおむね精液検査の結果に比例するので、数や運動率が十分な人は断片化も少ない場合が多いのですが、中には検査結果が良くても断片化が多く見られる人がいます」(小堀さん)

これはいわば、精子の「質」の低下。「老化」と言い換えてもよいだろう。精液検査では主に数や運動率しか見ないが、基準を満たしているのに原因不明でなかなか妊娠しない人の中には、実は精子が老化している可能性もあるかもしれない。

当然だが、年齢を重ねれば重ねるほど精子も老化するため、こうした質の低下は加齢によって増えると考えられる(ただし、中には30代から受精卵に細胞分裂を促す力が弱い精子が見られることもあるという)。男性は精子さえあれば何歳でも子どもができるわけではなく、加齢とともに子どもができにくくなるのは男性も女性も同じだ。特に子どもを望むなら、タイムリミットは意外と早いと心得ておくべきだ。

環境やライフスタイルが精子を老化させる

こうした精子の老化を進める原因は何か? 小堀さんは、PM2.5やダイオキシンなど環境の影響と、ライフスタイルの変化が影響している可能性があると考えている。環境中の化学物質や、体脂肪率、栄養やストレスといったライフスタイルの要因がホルモンにも影響を及ぼすということだ。

「例えば150年ぐらい前、大多数の人は暗くなったら午後8時ごろには寝るという生活をしていました。ここ数十年でインターネットが登場して情報のスピードが加速し、夜になっても働いたり活動したり、夜遅くに食べたり飲んだりと、ライフスタイルが様変わりしています。肥満や糖尿病など昔は少なかった病気も増えてきました。ここ数十年で急激に起こった環境とライフスタイルの変化が、強く体に影響を及ぼしているのではないでしょうか」(小堀さん)

肥満と精子の関係を示す研究には、例えばこんなものがある。肥満度を示すBMI(Body Mass Index)という指標があるが、平均BMI33のグループが30までダイエットした結果、精子DNAのダメージ度合いを示すDFI(DNA Fragmentation Index: DNA断片化指数[注2])の平均値が有意に低下したというものだ[注3]。この研究では、体重が減った人ほどDFIが低下し、また精子の形態もダイエット後に改善されたという。「これに反論する論文もあるが、肥満が精子の状態に影響している可能性を示す報告といえるだろう」(小堀さん)。

小堀さんは、「Testicular Dysgenesis Syndrome(TDS、精巣形成不全症候群)」という一連の病気が急速に増えていることも、環境やライフスタイルの変化と関係していると指摘する。

TDSとは、精巣の機能が悪化し、男性ホルモンが低下することによって引き起こされる一連の症候群のことで、男性不妊症、精巣がん、停留精巣(精巣が陰のうの中に下りてこない状態)、尿道下裂(尿の出口が陰茎の先より根元側にある)などの病気が含まれる。これらは胎児期の男性ホルモンが深く関わっていて、環境の変化やライフスタイルが胎児期の精巣細胞に作用する結果、精巣の力が弱くなって、生まれつきこうした病気になる可能性が高くなると考えられる。

ライフスタイルの変化が精子の中にある遺伝子を変化させ、親から子へ、子から孫へと伝わっている可能性が考えられるが、このようなエピジェネティックな遺伝現象[注4]は、数世代前から続く大きな流れの中で考えなければならない話だという。

「個人的には、現代に生きている人類がこの大きな変化の流れを止めることは不可能だと思っています。今後も精子は減っていくでしょう」(小堀さん)

ストレスや老化のサインが表れる? スマホで精子チェック

精子の減少や老化などの変化は不妊症だけにとどまらず、全身の老化や子孫の遺伝子にまで関係する根本的な問題のようだ。老化は、活性酸素による酸化ストレスに代表されるような老化のストレスが影響して進むが、「生殖器である精巣が最初に影響を受け、精子の質が悪くなっているのかもしれません」と小堀さんは言う。ちなみに、男性不妊症の人は寿命が短い傾向があることも明らかになっているという。それだけ早めに老化ストレスを受けている可能性があるということだ。

[注2]DNAがどのくらい不安定な状態であるかを示す指数で、数値が高いほど精子DNAがダメージを受けており、妊娠しづらい。

[注3]Mir J ,et al. Andrologia. 2018

[注4]エピジェネティック:DNA塩基配列の変化を伴わず、遺伝子の発現を活性化したり不活性化したりする後付けの修飾のこと(塩基配列に変化が生じる「遺伝子突然変異」とは異なる)。エピジェネティックな遺伝情報の変化は次世代の細胞に伝えられ、調節が破綻すると、生まれてくる子どもの様々な異常や疾患につながることから、がん治療や再生医療などにおいても重要なテーマになってきている。

自分の精子がどんな状態か心配になったら、早めに調べてみよう。精液検査は泌尿器科または不妊治療の一環で婦人科でも可能だ。多忙、羞恥心など様々な理由で医療機関に行きにくい人向けには、「TENGA MEN'S LOUPE」(TENGAヘルスケア)や「Seem」(リクルートライフスタイル)など、自宅でスマートフォン(スマホ)を用いて精子の状態を見られるキットも市販されている。

実は、精子の数や運動率は、その日の体調によって10倍もの差が出るそうだ。女性は毎月の月経によって、いや応なく体調や生活リズムを意識するが、男性にとっては精子がストレスや老化のサインを真っ先に表す、女性にとっての月経のようなものともいえる。

老化に対抗する健康習慣が精子を守る

では、危機的状況の精子を守るすべはないのだろうか?

「遺伝子に刷り込まれた体質的なものは変えられませんが、老化やストレスによって精子の状態が悪くなるので、基本的には老化を促進しないような日々の生活によって、精子の状態が改善する可能性はあると考えています」(小堀さん)

以下に、精子を守るために日常生活で心がけたいことを挙げた。よく寝る、太りすぎないようにする、運動する、禁煙、健康的な食生活、ストレスをためないといった根本的な生活習慣の改善がそのまま精子を守る生活につながる。老化に対抗するという意味で、抗酸化作用のあるサプリメントが精子の運動率を上げるという報告もあるそうだ。

子どもを望みながら、このような生活改善をしても精子の状態が改善しない場合、人工授精や体外受精などの不妊治療が選択肢となる。次回は男性不妊症の原因と実態、治療法についてお伝えする。

(ライター 塚越小枝子)

小堀善友さん
 獨協医科大学埼玉医療センター泌尿器科・リプロダクションセンター准教授。2001年金沢大学医学部卒業、同大泌尿器科入局、2009年獨協医科大学越谷病院泌尿器科助教、2013年同大越谷病院講師、2014~16年米国イリノイ大学シカゴ校泌尿器科リサーチフェロー。専門は男性不妊症、勃起・射精障害、性感染症。著書に「泌尿器科医が教えるオトコの『性』活習慣病」(中公新書ラクレ)など。HP:Dr.小堀の男の妊活ガイド、Facebook:コボちゃん先生の射精障害講座

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