野菜カレーで人気のcamp 新業態は「肉盛りカレー」
ゴロゴロ野菜が売りのカレーチェーン「野菜を食べるカレー camp」(以下、camp)の新業態「野菜を食べるBBQカレーcamp」が2018年3月12日、新橋駅前にオープンした。同店は「1日分の野菜カレー」など野菜が主役のカレーが特徴だが、今回は肉がメインだという。果たしてどんな店舗なのか、足を運んでみた。
「野菜を食べるBBQカレーcamp」はJR新橋駅前のニュー新橋ビル1階にある。内装は既存店と同じくキャンプの雰囲気を演出しているが、やや暗めの照明で、これまでの店舗よりも大人っぽい印象。オープンキッチンのグリルで炎を上げながら網焼きされている肉の香ばしさが食欲を刺激する。
肉はボリューム満点、でも野菜が小さい?
メニューは「BBQチキンカレー」「BBQ厚切りポークカレー」など5種類。カレーソースは自家製キーマカレー(中辛)、マイルドチーズカレー(甘口、150円増し)、粗挽きスパイシーカレー(辛口、50円増し)の3種類から選べる。
実際に「BBQチキンカレー」(890円)と「BBQ厚切りポークカレー」(990円)を注文してみた(価格は税込み、以下同じ)。カレーソースが盛られたスキレットとライスの皿が別々になっている、campではおなじみのスタイル。ライスの横には細かく刻まれた野菜がたっぷりだ。その上に、それぞれ網で焼かれたボリュームのある鶏肉や厚切りの豚肉がのっている。
肝心の肉は一度蒸したものをタレに漬けて焦げ目を付ける程度に焼いており、スプーンで簡単にほぐれる柔らかさ。カレーソースにもよく絡む。粗挽きスパイシーカレーは別添えのスパイスを食べる直前にかけることで、より複雑な味に。マイルドチーズカレーはチーズのコクで辛みが抑えられているので、辛いものが苦手な人にはちょうど良いだろう。
ただ気になったのは野菜の小ささ。campのカレーといえば1日分の野菜カレーなど大きくカットされたゴロゴロ野菜が特徴だった。この店舗ではすべて細かく刻まれている。実はここに今回の新業態の秘訣があるという。
店舗で手作りするほうが低コスト
肉を売りにするカレーの店を考案したきっかけは、フィリピンへの出店計画だったそうだ。現地企業から声が掛かり、「面白そうだから」と初の海外出店の準備を始めたが、「東南アジアでは野菜のみの料理では満足してもらえない。肉もたっぷりと入れなければならなかった」と、campを運営するバックパッカーズ(東京都千代田区)の佐藤卓社長は話す。そこで、ボリュームのある肉を前面に出したBBQカレーを看板メニューにすることになった。
さらにこの店が他のカレーチェーンと違うのは、セントラルキッチンで調理したカレーソースは使わず、タマネギを炒めるところから店内で調理していること。実はこれもフィリピン出店がきっかけだという。というのも、フィリピンは日本の鶏肉、豚肉の輸入が難しく、肉のエキスが含まれるカレーソースも対象となるのだ。
そこで、コストを上げずに店舗でゼロからカレーソースを作る手段を試行錯誤した。まずカレーソースは1種類に厳選し、タマネギなどカレーソースを作るための香味野菜を自動で炒め続ける機械などを導入。さらに野菜を細かく刻むことで、素揚げしたり炒めたりする作業を複数人分一気にできるようになった(既存店では注文を受けてから1人分ずつ野菜を調理して出している)。野菜が細かく刻まれていた理由はここにあったのだ。その結果、店舗で作るほうがセントラルキッチンで作ったカレーソースを使うよりもコストを少なくできることが分かったという。
「セントラルキッチンで作ったカレーソースは、運搬するために加圧や加熱などの工程が必要。運搬費も含めると、店舗で手作りするほうが半分程度のコストで作れた。さらに、スパイスやソースに使う野菜もすべてフレッシュなものを使え、『クラフト(手作り)カレー』として差異化できる」と力を込める。
バックパッカーズは2017年夏、「かつや」などを運営するアークランドサービスホールディングス(東京都千代田区)の傘下になった。東京・代々木の路面店としてスタートしたcampは、2010年からJR東日本グループの日本レストランエンタプライズと業務提携してJRの駅近辺やエキナカを中心に店舗を増やしてきた。大手外食企業の傘下となり、さらにセントラルキッチンを使った多店舗化にまい進すると思いきや、まさかのクラフトカレーチェーン計画だ。
これからは直営店をメインに、年内に9店舗、5年以内に100店舗を展開する計画だという。これまでのカレーチェーンの常識を超えた新たな挑戦で、「カレーハウスCoCo壱番屋」を頂点とする市場でどこまでシェアを獲得できるだろうか。
(日経トレンディネット 北川雅恵)
[日経トレンディネット 2018年4月23日付の記事を再構成]
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