渋谷カルチャーの復興へ 109がエンタ系施設へ注力
東京・渋谷駅前の交差点横に建つファッションビル「109MEN'S」が、「MAGNET by SHIBUYA109」(以下、「MAGNET」)として生まれ変わり、4月28日に、一部フロアが先行オープンした。スタジオとしてのみ使用していた屋上を開放し、生の音楽やダンスを楽しめるイベントスペースを設置。7階は食事やお酒とともに、展示したアートや流れる音楽をクラブ感覚で味わえるフロアとなる。さらにVR体験ができる施設も予定するなど、エンタテインメント性を高めるのが特徴だ。
施設を手掛けるSHIBUYA109エンタテイメントの代表取締役社長・木村知郎氏は「かつての渋谷はセンター街に若者が集まり、そこから新しい文化が生まれた。MAGNETは新しい才能を秘めたアーティストやクリエイターが情報発信をし、そこに若い世代が集う、新たな渋谷カルチャーを生み出す場にしたい」と話す。
同社は2017年4月、東急沿線のショッピングセンターなどを運営する東急モールズデベロップメントから独立、全国5店舗のSHIBUYA109事業に特化した新会社として設立された。スタート後はその社名の通り、「エンタテインメント」とコラボレーションした企画に力を入れている。
欅坂46、BTSらが出店
SHIBUYA109の8Fで、エンタテインメントとファッションの融合をテーマに、関連アイテムの展示や販売を行う「DISP!!!」がその1つ。数日~1カ月ほどのサイクルで変わる期間限定ショップで、17年4月の開設後、欅坂46、安室奈美恵、TWICE、BTS(防弾少年団)といったアーティストから、『名探偵コナン』『HiGH&LOW』などの映像作品まで、約20組とタッグを組んでいる。店内のモニターにスマートフォンをかざすと、対応アプリでコンテンツが見られる新技術「LinkRay」も導入。BTSストアの開催時には限定ムービーを配信するなど、足を運びたくなる仕掛け作りに余念がない。
さらに特筆すべきは、動員が見込めるビッグネームだけでなく、女性グループBiSHの所属事務所「WACK」や、ユーチューバーが多数所属する「VAZ」など、人気が出始めた新鋭の発掘にも力を入れること。「店舗の設営から商品の開発・制作までサポートできるのが強み。リアル店舗で展開したことがなくても、コンテンツさえあれば『DISP!!!』ではストアが開設できる」(木村氏、以下同)。18年2月にはLINEスタンプで人気のキャラクター「ベタックマ」のリアルストアを日本で初めてオープン。限定商品なども取りそろえ、盛況だったという。
他にも、17年10月から1階のエントランスを使って、「109路上LIVE」と銘打ったライブバトルを2カ月に1回のペースで開催中。4月28日にはファイナルを行い、優勝者はその活動をサポートしていくという。「今後はダンスや写真などの分野でも、若い方の夢を応援したい。路上LIVEの優秀者がMAGNETでライブをしたり、逆にMAGNETで写真コンテンストを開催して上位の作品を109のシリンダーに掲出するといった連動も考えていく」。
かつてはギャル文化の中心地として存在感を示していたSHIBUYA109だが、オンラインショップの台頭もあり、売り上げは08年をピークに下降傾向。13年に東急東横線が東京メトロ副都心線と直結したことなどで、街自体の地盤沈下もささやかれる。「街にナショナルブランドの店舗が増え、渋谷らしさが薄まった」なか、自前で"渋谷の新たな顔"を発掘し、集客の起爆剤としたい考えだ。
(ライター 相良智弘)
[日経エンタテインメント! 2018年5月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連企業・業界