年金増やせる「繰り下げ術」 受給前なら方針転換可能

現役時代に会社員や公務員だった人(厚生年金の被保険者)がもらうのは老齢厚生年金と老齢基礎年金。それぞれ別々に繰り下げ年齢を決めることも可能だ。手続きは2回必要だが、自分の生活スタイルに合った受け取り方を選べる。

「遺族年金」は増えず

ただ、繰り下げ受給を考える際には注意すべき点も多い。

まず「特別支給の老齢厚生年金」についてだ。老齢厚生年金は年齢引き上げの途上にあり、65歳になる前から支給されている人がある。この特別支給は繰り下げ受給の対象外だ。

繰り下げを選んでも「加給年金」や「振替加算」は増額されないことも覚えておこう。これらは妻や子がいる会社員などを対象とする年金の加算部分。「増えると勘違いしている人が意外に多い」(社会保険労務士の望月厚子氏)が、増額対象はあくまでも本体部分のみだ。

「遺族年金」にも留意したい。例えば繰り下げを選んで年金をもらい始めていた夫が、72歳で亡くなったとする。残された妻には遺族年金が支給されるが、金額は、増額された年金ではなく、65歳時点の本来支給額を基に計算される。「繰り下げの影響で遺族年金が増えるということはない」(望月氏)

税・社会保険料は負担増も

もう一つ知っておきたいのが税金や社会保険料への影響だ。星野卓也・第一生命経済研究所副主任エコノミストは「繰り下げて年金が増えれば、税負担が増す人がいる。住む場所によっては公的医療保険や介護保険の保険料が増える場合もある」と指摘する。70歳まで繰り下げると年金額は42%増えるが、「手取りベースで考えると実質的な増額率は小さくなる」という。

繰り下げ可能な年齢は早くて66歳である点も確認しておこう。65歳6カ月や65歳11カ月を選んで受け取りを始めることはできない。

政府は2月にまとめた「高齢社会対策大綱」の中で、繰り下げ可能な年齢を70歳超へと引き上げることを検討するとした。長い老後を考えるとメリットの大きい年金繰り下げ。家族ともよく話し合い、年金事務所や専門家に相談するのも重要。制度の改定の行方も注視したい。

(土井誠司)

[日本経済新聞朝刊2018年5月5日付]

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