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年金増やせる「繰り下げ術」 受給前なら方針転換可能

2018/5/13

写真はイメージ=PIXTA

公的年金のもらい始めを遅らせて受取額を増やす「繰り下げ受給」の注目が高まっている。「人生100年時代」に備えて、長い老後の資金の手当てに有効との考えが広がってきたからだ。ただ、これまで普及していなかっただけに、制度を知らなかったり勘違いしたりしている人は多い。仕組みや要点をまとめた。

まずは基本から。公的年金の支給開始は原則65歳だが、希望すれば60~70歳の範囲でもらい始めることができる。このうち66歳以降に遅らせるのを繰り下げ受給と呼ぶ(図A)。

月単位で選ぶことができ、1カ月繰り下げるごとに年金額は0.7%増加。上限の70歳まで延ばすと42%増える計算だ。65歳からしばらく無年金でしのぐ必要があるが、長生きして生活費が膨らんだときに備えやすい利点がある。

「定年まで勤めた同僚に比べて自分は年金額が少ない。70歳まで遅らせればほぼ同じになる」。東京都で社会保険労務士として働く沢木明さん(67)は65歳からの年金はもらわずに繰り下げる考えだ。

■分岐点は12年後

51歳のときに勤め先を早期退職して厚生年金保険料を払わなくなった分、本来の年金額が少ない。そこで繰り下げをして年金額を増やす。繰り下げの仲間を増やしたいと、各地の年金セミナーなどで利点を説く。

年金繰り下げでまず気になるのが何歳まで生きればお得なのかだろう。表Bは繰り下げを選んだときの受取総額が、本来の65歳からの受取総額を上回る年齢を試算したもの。繰り下げた年齢から約12年後が損益分岐点となる。例えば70歳まで繰り下げると、おおむね82歳より長く生きれば有利だ。

高齢者世帯は収入の多くを年金に依存する(グラフC)。老後になくてはならない収入源だけに少しでも増やしたいところだが、実際に繰り下げ受給をする人はわずかだ。

受給権者数に占める割合は厚生年金、国民年金ともに1%台にすぎない。いますぐ生活資金を確保したい、早く死ぬと損をするといった理由があるが、制度自体への理解不足も大きいようだ。

繰り下げ年齢は事前に決めなければいけない――。よくある勘違いがこれだ。

年金は自分で年金事務所に請求の手続きをしない限り、支給が始まらないのが基本。何もしなければ支給開始は66歳、67歳と延びていき、自動的に繰り下げ受給の扱いとなる。

つまり繰り下げ年齢は65歳までに決める必要などなく、「もらい始めたいと思ったときに手続きをすればよい」(沢木氏)。生活に余裕のある間は先延ばしするという選択も可能だ。

途中で事情が変わっても対応できる。例えば当初70歳への繰り下げを考えていた人が68歳になって突然、生活資金に困ったとする。その場合、請求すれば、65~68歳の期間にもらえるはずだった金額を一括で受け取れる。年金額は増えないものの一度にまとまった資金を確保でき、その後は本来の年金額を生涯もらう。

年金は、支給開始後の変更は認められないが、待機中なら方針変更は自由だ。社会保険労務士の井戸美枝氏は「健康に不安が出てくるなどして当面の収入が不足していると思ったら、その時点で繰り下げのタイミングを早めてもらい始めるのもよい」と助言する。

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