月の海も大迫力 高倍率デジカメ、スマホにない望遠力
サーキットを駆け巡るレーシングカー、近づくと逃げてしまう野鳥、満月の「月の海」……。そうした遠くの被写体を、画面いっぱいに大きく撮影するのに便利なのが高倍率ズームのデジカメ。スマートフォン(スマホ)のカメラでは撮れない被写体に「ズームイン」できるのが魅力だ。ここではレンズのズーム倍率が大きいコンパクトデジカメを3モデル紹介する。
まずは遠くの被写体をスマホのカメラで撮った写真と高倍率ズームのコンパクトデジカメで撮った写真がどれくらい違うかを、下の2枚の作例から実感してもらいたい。
スマホに搭載されているレンズは、35mmフィルムカメラ換算で30mm前後の焦点距離となるものが多い。焦点距離は数値が大きいほど望遠なのだが、30mmだと人間の視野よりもやや広めの写真になってしまう。最近ではiPhone 7 Plus/8 Plus/Xなどが望遠用にもう一つレンズを持つ機種もあるが、それでも人間の視野に近い50mm前後の焦点距離だ。対して今回紹介する高倍率ズームのコンパクトデジカメは600mm以上の望遠撮影が可能だ。
ポケットサイズのコンデジでも超望遠
高倍率ズームのデジカメというと「コンパクトデジカメ」と呼ぶには大きく、スポーツ写真のフォトグラファーが持っているような、大きくて重いデジカメを想像するかもしれない。ところがポケットに入るようなコンパクトデジカメのなかにも、望遠撮影が得意な機種がある。その一つがキヤノンのPowerShot SX730 HSだ。
光学ズームは40倍で、焦点距離24mmから960mmまでをカバーする。ズーム時はレンズが前に長く飛び出してくるが、電源をOFFにするとレンズが縮まり、収納しやすくなる。またズームを望遠側にすると、液晶モニターに被写体をとどめておくのが難しく、ちょっとカメラを動かしただけで被写体を見失ってしまいがちだ。だが本機では、そういったときに役立つフレーミングアシスト(探索)ボタンがある。このボタンを押し続けると、カメラがズームアウトして被写体を見つけやすくする。被写体を再発見したらボタンを離すと、元の望遠の状態に戻してくれる。
スナップ撮影も得意だ。広角撮影時は被写体まで1cmの距離でもピントが合うため、色とりどりの料理が並ぶテーブルフォトの撮影もはかどる。撮影した写真を簡単にスマホに転送する機能も備えており、気に入った写真は即座にSNSにアップロードできる。
PowerShot SX730 HS(公式ECサイト価格4万8500円、税抜き、以下同)
センサーサイズ:1/2.3インチ
画素数:2030万画素(有効画素)
焦点距離:24mm~960mm(光学40倍)
F値:F3.3~F6.9
撮影感度:ISO80~3200
質量:276g(本体のみ)
きめ細やかな4K動画の撮影にも対応
写真だけではなく、動画も撮影したい。それも地上デジタル放送の画質を大きく超える4K(3840×2160ピクセル)の高解像度な動画を。そんな願いをかなえてくれる、コンパクトな高倍率ズームのデジカメといえばパナソニックのDC-TZ90だ。
光学30倍のライカブランドのレンズは焦点距離720mmまでをカバー。左右方向、上下方向のブレだけでなく、カメラ本体の回転によるブレも補正する「5軸ハイブリッド手ブレ補正」を搭載しており、ズーム時でも手ブレの少ない写真や動画が撮れる。
また4K解像度の動画撮影にも対応する。フルHDと比べて4倍という高解像な映像は、捉えた景色の細部までも見通ししやすく、圧倒的なリアリティーから立体感すら感じる。4Kテレビを持っているのであれば、積極的に使っていきたい。
スポーツの撮影に効果的な「4K PHOTO」という撮影機能も備える。これは4K解像度の写真を連写しつづけるもので、野球でバットがボールを捉えたシーンなど決定的な瞬間を写真として残せる魅力を持つ。
DC-TZ90(公式ECサイト価格4万6880円)
センサーサイズ:1/2.3インチ
画素数:2030万画素(有効画素)
焦点距離:24mm~720mm(光学30倍)
F値:F3.3~F6.4
撮影感度:ISO80~3200(拡張設定時ISO6400)
質量:280g(本体のみ)
暗いシチュエーションにも強いセンサーを誇る
これまで紹介した2機種はコンパクトなのが魅力だが、半面搭載されているセンサーのサイズが小さいため、暗い場所ではノイズが目立ちやすい。明るい場所だけでなく、どんなシチュエーションでも納得できる作品づくりがしたいというなら、ソニーのDSC-RX10M4がお薦めだ。
DSC-RX10M4には1インチサイズのセンサーが使われている。PowerShot SX730 HSやDC-TZ90の1/2.3インチセンサーと比べると、約4倍のサイズだ。レンズは光学ズーム25倍の35mm換算600mmまでとなるが、F2.4~4とズームレンズにしては極めて明るい仕様となっている。オートフォーカスが速く、連写可能枚数も多いことから、野鳥撮影や鉄道写真を趣味としているユーザーからの人気も高い。
デメリットもある。サイズが大きく、重量も1kgを超える。価格も20万円近くになる。おいそれと購入できるモデルではない。しかし、それでも一眼レフに超望遠レンズを付けるのと比べたらサイズも重さも価格もずっと下になる。撮影能力は一眼レフ+超望遠レンズに近いレベルだからDSC-RX10M4を持ち歩いているプロのスポーツカメラマンもいるほどだ。
DSC-RX10M4(公式ECサイト価格18万9880円)
センサーサイズ:1/インチ
画素数:2010万画素(有効画素)
焦点距離:24mm~600mm(光学25倍)
F値:F2.4~F4
撮影感度:ISO100~12800(拡張設定時ISO64~25600)
質量:1050g(本体のみ)
(ライター 武者良太)
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