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緑茶かだしか、具はベーコン? お茶漬けの日に考える

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NIKKEI STYLE

私には小学生のころから作り続けている、オリジナルのお茶漬けがある。当時大好きだった2大アイテム「ベーコンとザーサイ」を使ったお茶漬けだ。のちに名古屋で経営していた飲食店でも「じろまる茶漬け」としてメニューに載せ、絶大な人気を誇ったものだ。また学生時代に教えてあげた友人宅では「いずみ茶漬け」という名で生き続け、今では彼女の息子さんが「時間がないからお茶漬けでいいや。いずみにしよう」と、自ら台所に立つほどの定番メニューとなっているらしい。

お茶漬けを日本人が口にしたのは、いったいいつごろからだろうか。一見すると簡単そうなこの質問は、実は一筋縄ではいかない、大変微妙な問題である。というのも、21世紀になった今でも、お茶漬けとは何かという「お茶漬けの最終定理」は証明されておらず、そこが片付かないことには答えも見つからないからだ(厳密には数学ではないが、あえて定理と呼ばせてもらおう)。実際私は過去に「この人とはお茶漬けの定義が違う」とひそかに感じたことが、何度もある。「サラサラっと、お茶漬けでも食べたいですね」「あ~、いいですね~」と意気投合した2人の、脳裏に浮かぶ映像が全く違ったとしても何も驚かない。

何をもってお茶漬けとするか。

ご飯に汁をかけることに文句を言う人はいないだろう。汁なしが流行する昨今だが、お茶漬けだけは汁なしというわけにはいかない。ご飯、そして汁は必須アイテムである。だがその汁が問題だ。おそらく「お茶漬けの最終定理」が証明できない、もっとも大きな理由はそこにある。つまり「お茶以外を認めるか否か」が重要な争点となるのだ。

お「茶」漬けなのだから、お茶をかけるのが当たり前ではないか、それ以外は認めないという人は案外多い。中には「お茶なら何でもいいというわけではない。煎茶以外はだめ」と言い張る強硬派もいる。私の友人の1人がその強硬派だ。彼女は、煎茶が切れているときはお茶漬けを断念するほどの煎茶絶対主義者であり、「ほうじ茶をかけておきながら、平然とお茶漬けと言い張る妹はどうかしている」と主張する。もちろんお茶以外の汁気など、言語道断だ。だし茶漬け派である私が身の危険を感じ、そっと口をつぐんだのは言うまでもない。

今あえて「だし茶漬け」という言い方をしたが、実は私はだしだけでなく、水分ならなんでもいいという博愛茶漬け派である。したがって、だしを使ったお茶漬けのことも本当は「だし茶漬け」とは呼ばずに、単にお茶漬けと呼んでいる。すべての汁気を愛しているので、野菜スープをかけようが、鶏ガラからとった中華スープの毛湯(マオタン)をかけようが、私にとってはすべて「お茶漬け」なのである。

それは私の家庭環境が影響していると思う。実家は緑茶に縁遠い家であった。両親とも日常的にお茶を飲む習慣がなく、私も25歳まで1人でお茶をいれた経験もなく育ってしまった。だから、さあお茶漬けでもしようという時に、そもそも緑茶が選択肢になかったのだ。

では何をかけていたかというと、まずだし。そしてお湯である。

実家は異常なまでにだしを愛する家であった。常にコンブやカツオブシ、煮干しなどのだしを鍋で作っていたし、母は1人暮らしになった今も朝起きるとだしをとる習慣が続いている。食品庫は相変わらず、だし用の食材でパンパンである。お茶漬けを食べるシチュエーションの大部分は「パパッと手軽に」だと思われるが、うちではパパッと手軽に使える汁気はだししかなかった。お茶は急須を探すところから始まる、ハードルの高いものだったのだ。

「お茶漬けにはだしをかけていた」というと、わざわざだしをとるなんて、となかなか同意を得られない。しかしお湯に関しては、多くの人が賛同してくれるのではないだろうか。

それは「お茶漬けのもと」の存在が大きい。「お茶漬けでも食べよう」という際に選択肢として浮かびやすいのが、永谷園の「お茶づけ海苔」をはじめとするお茶漬けのもとだ。緑茶成分を含んでいる製品も多く、お湯をかけるだけで「お茶をかけたお茶漬け」が味わえる。メーカーの公式サイトでも、お湯をかけるよう推奨しているところが多い。

また、つくだ煮で食べるお茶漬けも、お湯派が多いジャンルである。貝類やコンブ、小魚やゴボウなどを甘辛く炊いたつくだ煮は、濃い味つけの奥に豊かな素材の味わいが残っている。この絶妙な風味をしっかり感じ取るために、お茶ではなくお湯を選択すべしと、お茶漬けマニアの友人も言っていた。だし派の私も、桑名の名産「しぐれハマグリ」などをお茶漬けにするときは、だしは不要だなと思う。お湯をかけると、甘塩っぱいつくだ煮がほどけていく変化もまた楽しい。

今のようなお茶が世の中に普及する前は、ご飯にはお湯や水をかけて食べるのが当たり前だったのではないか。織田信長もののマンガやゲームなどで、やたら「湯漬け」を食べているシーンを目にしたことはないだろうか。当時は殿様といえど、毎食炊きたてのご飯を食べられるわけではない。固くなった冷めたご飯を即座においしく食べることができ、食事に時間もかからない湯漬けは、戦国時代にうってつけの食べ方だったと思われる。

さらに遡って、枕草子や源氏物語などの平安時代の文献にも、湯漬けや水をかけて食べる水飯が登場する。日本人はかなり古い時代から、身分の高低にかかわらず、冷めたご飯はお湯や水をかけて食べられてきたはずだ。

冒頭の「お茶漬けを日本人が口にしたのは、いったいいつごろからだろうか」との問いは、お茶漬けに湯漬けを含むのか、それとも緑茶が広く庶民に愛飲され始めた江戸時代からカウントするのか、で答えが違ってくる。もちろん「水分ならなんでもいいという博愛茶漬け派」である私にとって、湯漬けはお茶漬けである。したがって私の答えは「日本人がコメ(冷めたご飯)を食べ始めたときから」となる。みなさんの意見はどうだろうか。

誰もが知っていて、よく食べる料理ほど、自分だけの「マイルール」が過激になりがちだ。これは私の持論であり、長年の研究テーマでもある。お茶漬けも例外ではない。今まで収集した、人それぞれの譲れない思いをいくつかご紹介しよう。

「具は普通。ただしお茶は麦茶に限る」「赤いルイボスティーに黄色いタクアンが最高。インスタ映えもする」「水出しの玉露茶漬けを知ったら他の茶漬けは食えない」と、煎茶以外のお茶にこだわる一派。

「具は子供のころから味噌一択」「この数年、ハムエッグ茶漬けにハマっている」「青カビのチーズとだしのマリアージュが最高」「市販のたこ焼きをご飯に載せます。だまされたと思って試してみて」と、自分だけの具材を探し求める人々。

「なぜご飯の方に味つけをしないのかな。僕はご飯にゆかりを混ぜます」「究極はチャーハン茶漬けだよね」「焼きおにぎり茶漬けを知って以来、味なしご飯は物足りない」と、ご飯に目を向ける派。そしてまさかの「具なんていりませんよ。あんなもの飾りです」という、シンプルイズベストのお方。たかがお茶漬け、されどお茶漬け。お茶漬けの範囲はますます広がりそうだ。

最後に、交流サイト(SNS)などに自作のお茶漬け写真をあげるときの必須アイテムをお伝えしよう。それは「あられ」だ。もともと、ノリの湿気予防のためにお茶漬けのもとに入れられていたと言われるあられ。ちょっと入っているだけで、がぜんお茶漬け感がマシマシになるのである。さらにミツバが加われば最高。あられとミツバがのった汁かけご飯を「お茶漬けではない」と言い切るのは、至難の技だ。「お茶漬けあられ」という名前で、製菓材料店などで売られている。探してみよう。

5月17日は、お茶漬けの日である。ゴールデンウイーク(GW)で遊び疲れた胃にも、ぴったりだ。お茶しか認めない人も、お湯でもだしでも何でもいい人も、サラサラと幸せをかきこもう。

(食ライター じろまるいずみ)

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