囲碁に学んだ3つの経営の極意 グロービス堀学長

4月のグロービス杯であいさつする堀義人グロービス経営大学院学長

4月20~22日の3日間、世界各地から選ばれた20歳未満の囲碁の俊英が競う国際選手権「グロービス杯 世界囲碁Uー20」が都内で開かれた。日本で開かれる唯一の世界戦を創設したグロービス経営大学院の堀義人学長(日本棋院理事)は、40歳から囲碁を学び始め、現在はアマ高段者の実力。「囲碁と経営は非常に類似性が高い」を持論とする堀学長に囲碁に学ぶ経営の極意を聞いた。

ムダな手を打つと経営も失敗する

――囲碁を楽しむ経営者は以前から多いですね。堀さんは囲碁からどんなことを学んでいますか。

「『経営の複雑性を排除すると、そこには囲碁盤が存在する』と日ごろから言っています。囲碁にはない経営の複雑性は(1)囲碁は1対1だが経営は複数のプレーヤー(2)石の働き自体はみな同じだが経営は多様性に富む個々の人間が働く(3)経営には自然災害や恐慌などの外部要因が関係する――の3点だけです。その点を除けば両者は極めて似通っています」

「まず1つは、経営は事業環境の分析を行い、経営計画を立て、経営手段を取捨選択して収益の拡大を図ります。米ハーバード大のビジネススクールでも、求められるのは経営分析と事業計画の立案です。囲碁も形勢を判断し、布石や定石、手筋、ヨセといった手段を駆使して最終的に目指すのは勝利です。マーケティング分析などは囲碁の定石や手筋と似ています」

「次に学習方法も共通していますね。経営は過去のケースを学んでいって経営の判断能力を身につけていきます。囲碁も過去の棋譜を研究して検討会なども行い棋力を養います。どちらもビッグデータをどう活用するかで実力が決まっていきます」

「3つ目に『経営戦略』の意味もより深く知ることができました。囲碁は一手一手が非常に重要です。前に打った手を何とか生かそうと、あれこれ策を弄して逆に傷口を広げることは少なくない。経営でも『あれもやっておこう』といった気持ちでの着手は悪手になりがちです。十分に検討の上『しなければならない』ことを見極めて打った手が良い結果を生みます」

――40歳になってから囲碁を始めた理由は何だったのですか。

「それまでの自分とは非連続的なことを始めようと思ったのです。特に織田信長がなぜ囲碁をたしなんでいたかを研究してみたかった。桶狭間の戦いでは立ったまま食事をしたというエピソードを残すほど、信長は非常にせっかちな人物ですが、なぜ囲碁は好きだったのか」

「信長は囲碁を通じて合戦のシミュレーションをしていたことに思い至ったのです。一手一手の着手が重要で悪手を打てば配下の武将が死んでしまうこともある。戦いの最中に伝令が前線の状況を報告している際、信長の脳裏には囲碁盤があって、そこで次の一手を考えて指令を出していたのでしょう」

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