「口コミで広めようと、ネットのお守りランキングにも投稿し、『5位くらいに入れば御の字』と思っていたら2位に選ばれました。また、受験生の泊まるホテルに置いてもらったりしているうちに、『パッケージにメッセージを書き込んで応援してもらうとうれしい』という声があると分かりました。売りながら気づくことが多かったです」

「価値をつくる」のがマーケティング

――マーケティングとの出合いは?

「入社して最初の7年は営業でした。『そのうちマーケティングも経験してみたいな』と思うくらいで、強く希望してたわけではありません。広告を作ったり、コミュニケーションの一部を担ったりするくらいのものだろうと高をくくっていました。1992年に日本のネスレマッキントッシュ(現コンフェクショナリー事業部)に異動する際、『おまえはマーケティング担当』と言われて大慌てで勉強しました」

「担当して初めて分かったのが、生産計画から店頭販売まで一連のバリューチェーンを見渡して、社内の各部門や取引会社と協業することがマーケティングだ、ということです。これは今でも考え方の基礎になっています。2005年に高岡(浩三・現社長兼最高経営責任者)に呼ばれ、二人三脚でマーケティング統括の仕事をするうちに、マーケティングとは『自分と顧客を取り巻く現実を直視し、問題を発見して、解決するために実行して付加価値を作る』ことだと位置づけるようになりました」

社員のアイデア、年に4800件も

――具体的には?

「簡単に言えば、見えない問題を発見して、解決するために周りを巻き込みながら事業化する、そういう社員の力を引き出すことです。そこで全社員の能力を高めるため、2011年からイノベーションアワードを始めました。社員からアイデアを募集し、役員会で評価して受賞者を決め、年末に表彰します。金賞のご褒美は、100万円とスイス本社への研修です」

石橋氏は、ネスレ日本の総合サイト『ネスレアミューズ』も手掛けた

「ただし、受賞者は実際にアイデアを事業化しなければいけません。どんなマーケティング戦略を立て、社の内外をどうやって巻き込んで仕事を進めるか。とてもいいトレーニングになります。初年度は79件の応募でしたが、2017年は4800件です。社員1人が2件くらい提案している計算です」

「16年はネスカフェスタンドが受賞しました。鉄道会社と協業して、駅のホームにカフェスタンドを設け、新聞や菓子なども販売するビジネスモデルです。現在、阪急電鉄、阪神電鉄、東京急行電鉄、小田急電鉄の4社の駅に出しています。これまで、オーブントースターで焼いて食べるキットカットや高級タイプのキットカット専門店『キットカット ショコラトリー』が受賞し、それぞれ事業化しています」

SNS戦略は不可欠

――ネットなどのデジタルとはどう向き合っていますか。

「10年11月に、ネスレ日本の総合サイト『ネスレアミューズ』を自社メディアの形で始めました。これまで30以上あったブランド関連サイトの入り口を1つに集約し、消費者に直接販売する電子商取引(EC)サイトも設けました。音楽や映画といったエンターテインメントのコンテンツもあります。EC部門の売り上げは急成長しており、ネスレ日本全体の売り上げの15%程度を占めています」

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