視聴率20%超えが当たり前になったNHKの連続テレビ小説(以下、朝ドラ)は、ドラマ界をけん引する存在。98作目となる『半分、青い。』では、永野芽郁が主演を務めている。この春、高校を卒業したばかりの18歳が、朝ドラのオーディション初参加で、2366人の中から大役を射止めた。

「オーディションって好きなんです。キャラクターが決まっていない、自分の想像で自由に演技できる数少ない機会なので。でも朝ドラのヒロインのときは全然手応えがなくて、ダメだと思っていました。だから選ばれたのは、まさかまさかです(笑)。母には発表会見の10分前に、『どこにいると思う?』と電話しました。『実はね…』と話したら、突然黙って泣き出して、私もつられて泣いちゃいました」
『愛していると言ってくれ』『オレンジデイズ』など、数多くのヒット作で知られる北川悦吏子が脚本を手掛ける。永野が演じる楡野鈴愛(にれのすずめ)は活発な少女。ただ、幼い頃に患った病気が原因で、左耳が聞こえないハンディキャップがある。
「少しでも音が聞こえないことに慣れようと思って、撮影所でも耳栓をしたりして。それでも、左側でかすかな音がすると、左側から振り返ってしまったり、いろいろなところで難しさはありました。でも慣れてきたら、それほど耳のことを意識することもなくなってきて、これが鈴愛になるってことなのかなと感じています」
鈴愛は同じ日に同じ病院で生まれた萩尾律(佐藤健)と友情や愛情という枠を超えた絆で結びつき、人生の荒波を乗り越えていく。「鈴愛と律は本当に不思議な関係なんです。ソウルメイトのような、違うような。恋人でもないし、ただの幼なじみでもない。微妙なバランスで成り立っているので、健さんとは『2人の関係性を考えすぎるとかえって大切なものが分からなくなりそうだから、感じたままを演じようね』と話しています」。
朝ドラは撮影が長期にわたるが、こんな力強い言葉も。「今5カ月なので、半分終わったなって(笑)。もう5カ月しかないです。そう考えると、あっという間です(笑)」。
インタビュー中に見せる笑顔は無邪気そのもの。一方で度胸とタフさを持つ。朝ドラでどんな成長を遂げるのか楽しみだ。

(ライター 田中あおい)
[日経エンタテインメント! 2018年5月号の記事を再構成]