

プロデューサーの草ヶ谷大輔氏は、長澤について、「古沢さんの台本と戦っている姿勢が見えて、『私だったらこうする』という意思を感じる。想像を上回る芝居をしてくれるし、はじけ方がすごい」と評する。
行動を共にする、真面目で小心者なボクちゃん役の東出昌大、百戦錬磨のリチャード役の小日向文世とのチームワークもうまくいっているようだ。
「東出君とは初共演で、同い年なんです。目指すところに向かって奮闘している姿が、ボクちゃんのキャラクターとあいまって、一緒に仕事をして、東出君を好きになっていく人たちの感覚が分かりました。小日向さんとは、ちょこっと共演して終わることが18歳ぐらいから続いていて。ずっと笑わせてくれますが、芝居に関しては妥協なく、きちっと思ったことを言ってくださいます」
17年に30歳を迎えた。舞台『キャバレー』で松尾スズキ、映画『銀魂』で福田雄一監督、『散歩する侵略者』で黒沢清監督と、初顔合わせのクリエイターとの仕事が増えたことは、女優としての成長を考えての意識的なものだったのか。
仕事と常に向きあいたい
「気にしていないというか、特にないんですよね。やったことのない役だから楽しそうと思うことはありますけど。松尾さんや福田さんは、見せ方はちょっと独特ですけど、舞台で培ってきた土台がある方たちで、紳士的な、素晴らしい演出家だなと思っています。
基本的には、見る人が面白いと思うものを作りたいというのが一番ですね。役柄の幅を広げたいというよりは、職業なので、同じ役をやってるだけじゃ食べていけないという感覚。割と現実的です(笑)。現場には遊びに来てるわけじゃないし、ちゃんと仕事と向き合っていたい、この世界の華やかな部分にのまれたくないという気持ちが10代の頃から強かったので。
最近、久しぶりに山田孝之君とお仕事でご一緒したんです。10年前に共演したときは、ほとんどしゃべらずに終わってしまったんですけど。作品を重んじる姿勢が、私が仕事を積み重ねるなかで見えてきた答えと重なる部分があって、とても共感しました。
今回はコメディー作品ですし、どうしても現場が楽しくなっていっちゃうんですよ。でも惰性でいかないように。丁寧に取り組んで、人の心をつかむ作品にしたいです」
(ライター 内藤悦子)
[日経エンタテインメント! 2018年5月号の記事を再構成]