長澤まさみ 「あっけらかんとしたダー子が好き」
相手を信用させて金持ちから大金をだまし取る3人の詐欺師が活躍する痛快コメディー『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)。長澤まさみが11年ぶりに「月9」に主演。様々な職業の人物になりきり、ターゲットの懐に入り込んでいく主人公のダー子を、どう演じているのか。
『コンフィデンスマンJP』の脚本は、映画『ALWAYS三丁目の夕日』やドラマ『リーガルハイ』シリーズなど、数々のヒット作がある古沢良太。長澤まさみが演じる、詐欺師のダー子は天才的な知能と抜群の集中力を持ち、難解な専門知識も短期間で自分のものにできる。
「放送されるのが『月9』だとは、ギリギリまで知らなかったんです(笑)。毎回色々な人物に扮装するので、1人の人間を演じているっていう感覚があまりなくて。常に新鮮な気持ちで現場にいられます。
古沢さんの台本は、何度読んでも面白いんですよね。セリフが生きていて、各話で感情や行動、物語の流れに無理がないので、すごく楽しく取り組めています。
つかみどころのないダー子役は、難しいです。キャラクターが決まっているほうが演じやすいので、ダー子がなりきる人物に関しては、特に迷うことはないのですが。だから、ダー子が部屋代わりにしているホテルのスイートルームのシーンでは、まだ模索しています。お金を舞い上げるシーンでは、変な緊張感も味わいながら(笑)。
詐欺師と言えども、気持ちは世直しなので、意外と愛情が深くて優しい子なのかなっていう部分は見えてきました。過去を引きずらずに、弱みを見せず、明るく前向きでいる姿が魅力だと思います。ダー子のあっけらかんとしたところが好きですね」
客室乗務員(CA)や中国人マダム、くノ一など、長澤の本格的な変装姿も大きな見どころだ。
「ダー子のユーモアや、遊び心を生かす感覚で、『オマージュだ』という思いでやっています。印象的だったのは、山形弁をしゃべる40歳の女性の役。つかみが面白くて、台本を読みながら大笑いしました。演じているときも、みんながうれしそうで。方言って不思議ですね。かわいらしくも見えるし、情が湧くというか」
プロデューサーの草ヶ谷大輔氏は、長澤について、「古沢さんの台本と戦っている姿勢が見えて、『私だったらこうする』という意思を感じる。想像を上回る芝居をしてくれるし、はじけ方がすごい」と評する。
行動を共にする、真面目で小心者なボクちゃん役の東出昌大、百戦錬磨のリチャード役の小日向文世とのチームワークもうまくいっているようだ。
「東出君とは初共演で、同い年なんです。目指すところに向かって奮闘している姿が、ボクちゃんのキャラクターとあいまって、一緒に仕事をして、東出君を好きになっていく人たちの感覚が分かりました。小日向さんとは、ちょこっと共演して終わることが18歳ぐらいから続いていて。ずっと笑わせてくれますが、芝居に関しては妥協なく、きちっと思ったことを言ってくださいます」
17年に30歳を迎えた。舞台『キャバレー』で松尾スズキ、映画『銀魂』で福田雄一監督、『散歩する侵略者』で黒沢清監督と、初顔合わせのクリエイターとの仕事が増えたことは、女優としての成長を考えての意識的なものだったのか。
仕事と常に向きあいたい
「気にしていないというか、特にないんですよね。やったことのない役だから楽しそうと思うことはありますけど。松尾さんや福田さんは、見せ方はちょっと独特ですけど、舞台で培ってきた土台がある方たちで、紳士的な、素晴らしい演出家だなと思っています。
基本的には、見る人が面白いと思うものを作りたいというのが一番ですね。役柄の幅を広げたいというよりは、職業なので、同じ役をやってるだけじゃ食べていけないという感覚。割と現実的です(笑)。現場には遊びに来てるわけじゃないし、ちゃんと仕事と向き合っていたい、この世界の華やかな部分にのまれたくないという気持ちが10代の頃から強かったので。
最近、久しぶりに山田孝之君とお仕事でご一緒したんです。10年前に共演したときは、ほとんどしゃべらずに終わってしまったんですけど。作品を重んじる姿勢が、私が仕事を積み重ねるなかで見えてきた答えと重なる部分があって、とても共感しました。
今回はコメディー作品ですし、どうしても現場が楽しくなっていっちゃうんですよ。でも惰性でいかないように。丁寧に取り組んで、人の心をつかむ作品にしたいです」
(ライター 内藤悦子)
[日経エンタテインメント! 2018年5月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。