ロックバンド感覚ピエロ 初のフルアルバムで新機軸
ドラマ『ゆとりですがなにか』(2016年)の主題歌に『拝啓、いつかの君へ』が抜てきされ、注目を集めた4人組ロックバンド、感覚ピエロ。力強いギターサウンドに中毒性の高いメロディーを乗せた楽曲と、圧巻のライブパフォーマンスが受け、「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」など数多くの音楽フェスに出演。新しい取り組みを重ね、着々とファン層を拡大しつつある。
13年のバンド結成以来、音楽レーベルやマネジメント会社には所属せず、作詞作曲はもちろん、アートワークやライブブッキングまで自ら手掛けてきた。その理由をギターの秋月琢登は、「動画投稿サイトなどの発信ツールの進歩もあり、このスタイルが4人の意思を一番スムーズにリスナーに届けられるから」と明かす。ドラマ主題歌に決まった時も、YouTubeで彼らのことを知った監督から直接オファーがあったという。
そして17年、さらなる飛躍を求めてエイベックスの子会社、エイベックス・ベンチャーズとエージェント契約を結んだ。「制作スタイルは変わりませんが、選択肢が増えたことで昨年は映画やアニメ作品の主題歌に楽曲が採用されるなど、今までよりも届けられる層が広がりました」(秋月)
そんな彼らが初となるフルアルバム『色色人色(イロイロトイロ)』をリリースした。ボーカル&ギターの横山直弘は、「感覚ピエロの楽曲の幅広さを楽しんでもらえる、名刺代わりの1枚」と自信をのぞかせる。
秋月が作詞作曲した『さよなら人色』は、出会いと別れによって人間の持つ色合いが変化する様を描いた王道のロックナンバー。「歌とメロディーを際立たせるため、ギターやベースなどの楽器が鳴りすぎないよう引き算の音作りを心掛けた」(秋月)と語る。
壮大なミディアムバラード「Just to tell you once again」は、横山が元彼女の結婚を知り作った曲だ。「当初の個人的すぎる内容の歌詞から、サビの『愛する君へ/光を未来を希望を』のような、聴いた人も誰かにその思いを届けたくなるものへと、歌詞を練り上げました」(横山)
『CHALLENGER』では打ち込みサウンドに初挑戦。『LOVE GENERAL』はドラムの西尾健太が作詞を担当したことでリズミカルな歌詞になるなど、変化に富んだ楽曲が並ぶ。
今回新しい取り組みとして、3月に始まった47都道府県ツアーのチケット購入者に、CD発売前に全楽曲を配信でプレゼントした。「レコード会社に所属していない僕たちだからこそできる試みをやっていきたい」(秋月)。今後も日本の音楽界に新風を巻き起こしていく存在となりそうだ。
(「日経エンタテインメント」4月号の記事を再構成 敬称略 文/中桐基善)
[日経MJ2018年4月27日付]
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