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水深60mに10分素潜り 驚異の漂海民族にDNA変異

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/5/5

ナショナルジオグラフィック日本版

マレーシア、マンタブアン島のサンゴ礁で魚や貝を獲るバジャウ族の青年ディド(PHOTOGRAPH BY MATTHIEU PALEY, NATIONAL GEOGRAPHIC)

 フィリピン、マレーシア、インドネシアの周辺海域で暮らす漂海民族であるパジャウ族の潜水能力は驚異的だ。素潜りでどんどん潜ってゆき、水深60メートルのところに10分以上もとどまることができる。このほど学術誌『セル』に発表された論文で、バジャウ族の人々には脾臓(ひぞう)が大きくなるDNA変異があり、遺伝的に水中での活動に適した体になっていることが初めて確認された。

■脾臓が1.5倍の大きさに

 人体には多くの器官が備わっているが、脾臓はあまり目立たない存在だ。実際、人は脾臓がなくても生きられる。しかし、脾臓は免疫系をサポートし、赤血球のリサイクルにも一役買っている。

 これまでの研究から、ほとんどの時間を水中で過ごす海生哺乳類のアザラシは、脾臓がかなり大きいことがわかっている。論文著者であるデンマーク、コペンハーゲン大学地理遺伝学センターのメリッサ・イラード氏は、潜水を得意とする人々にも同様の特徴が見られるかどうか調べたいと考えた。タイに旅行した際、彼女は漂海民族の話を聞き、その伝説的な潜水能力に興味を持った。

 「まずはインドネシアのバジャウ族の人々に会いに行きました。いきなり検査機器を持って乗り込み、自分の用事が済んだらすぐに帰るようなことはしたくなかったからです。2回目の訪問で、ポータブル超音波画像診断装置と唾液採集キットを持って行きました。そこで数軒の家を回り、脾臓の画像を撮影させてもらいました」とイラード氏は言う。

 「たいてい見物人がいました。私が彼らの存在を知っていたことに驚いていました」

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