検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

水深60mに10分素潜り 驚異の漂海民族にDNA変異

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

フィリピン、マレーシア、インドネシアの周辺海域で暮らす漂海民族であるバジャウ族の潜水能力は驚異的だ。素潜りでどんどん潜ってゆき、水深60メートルのところに10分以上もとどまることができる。このほど学術誌『セル』に発表された論文で、バジャウ族の人々には脾臓(ひぞう)が大きくなるDNA変異があり、遺伝的に水中での活動に適した体になっていることが初めて確認された。

脾臓が1.5倍の大きさに

人体には多くの器官が備わっているが、脾臓はあまり目立たない存在だ。実際、人は脾臓がなくても生きられる。しかし、脾臓は免疫系をサポートし、赤血球のリサイクルにも一役買っている。

これまでの研究から、ほとんどの時間を水中で過ごす海生哺乳類のアザラシは、脾臓がかなり大きいことがわかっている。論文著者であるデンマーク、コペンハーゲン大学地理遺伝学センターのメリッサ・イラード氏は、潜水を得意とする人々にも同様の特徴が見られるかどうか調べたいと考えた。タイに旅行した際、彼女は漂海民族の話を聞き、その伝説的な潜水能力に興味を持った。

「まずはインドネシアのバジャウ族の人々に会いに行きました。いきなり検査機器を持って乗り込み、自分の用事が済んだらすぐに帰るようなことはしたくなかったからです。2回目の訪問で、ポータブル超音波画像診断装置と唾液採集キットを持って行きました。そこで数軒の家を回り、脾臓の画像を撮影させてもらいました」とイラード氏は言う。

「たいてい見物人がいました。私が彼らの存在を知っていたことに驚いていました」

イラード氏は、バジャウ族と遺伝的に近いサルアン族の人々からもデータを収集した。コペンハーゲンに戻ってから両者のサンプルを比較してみると、バジャウ族の人々の脾臓の大きさの中央値が、サルアン族の人々より50%も大きいことがわかった。

「バジャウ族の人々の体に遺伝子レベルで何かが起きているなら、脾臓の大きさが変化しているはずです。実際、大きな変化を確認できました」

また、バジャウ族では、甲状腺ホルモンの制御にかかわるPDE10Aという遺伝子について特定のバリアント(多様体)が多く見られたが、サルアン族ではそのような傾向が見られないことも明らかになった。マウスでは、このホルモンは脾臓の大きさと関連づけられており、このホルモンの量が少なくなるように操作したマウスは脾臓が小さくなることがわかっている。

バジャウ族の人々は、この海域で1000年以上暮らしてきた。そうした長い歳月の間の自然選択の結果、遺伝的に有利な特徴を備えるようになったのだろうとイラード氏は推測している。

米デューク大学医学部のリチャード・ムーン氏は、脾臓の大きさがバジャウ族の人々がすぐれた潜水能力をもつ理由の一つになっているのは確かだが、ほかの器官の適応も寄与しているかもしれないと指摘する。「脾臓はある程度収縮することができますが、甲状腺と脾臓との直接的な関係は知られていません。ただ、その可能性はあると思います」

米ケース・ウェスタン・リザーブ大学の人類学者シンシア・ビール氏は、「世界の屋根」と呼ばれるチベットなどの高地に住む人々を研究している。彼女は、イラード氏の発見がきっかけになって面白い研究が始まるかもしれないと期待しているが、バジャウ族の人々が遺伝形質のおかげで潜水が上手になったと納得するためには、生物学的な数値データがもっと必要だと考えている。「脾臓の収縮力など、測定できることはもっとあるはずです」とビール氏は言う。

海から見えてくるもの

イラード氏は、今回の発見は、バジャウ族の人々が潜水の名手になった理由を明らかにするだけでなく、医学的にも重要だと考えている。

潜水反応は、酸素の急激な欠乏によって起こる急性低酸素症に似ている。急性低酸素症になると短時間で命を落とす人も少なくない。バジャウ族の研究は、低酸素症の解明につながる可能性がある。

しかし、漂海民族の生活様式は、近年、脅威にさらされている。彼らは社会から取り残され、陸上に暮らす人々のような公民権を享受することができずにいる。しかも、大規模漁業の増加により、自給自足のための漁はますます困難になっている。結果として、多くの人々が海から離れるようになった。

イラード氏は、漂海民族の生活を保護していかないと、バジャウ族も、彼らがもたらしてくれるかもしれない医学的な研究も、そう長くは続かないのではないかと心配している。

(文 Sarah Gibbens、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2018年4月23日付]

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_