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フラワーアーティストの田中孝幸氏

フラワーアーティストの田中孝幸氏

世界的なフラワーアーティスト、ダニエル・オスト氏の作品に感化され、自身も同じ道を歩んできた田中孝幸氏。アーティストとして様々な作品を発表する一方、東日本大震災の被災地に桜の木を植えるNPO法人「桜onプロジェクト」の代表という顔も持つ。共通するのは命をつなげていくという考え方だ。予防医学研究者の石川善樹氏が、その思考法に迫った。(前回「フラワーアートの気鋭 花市場のご用聞きから表現者へ」参照)

パナソニックや資生堂からも依頼、世界観をぶつける

石川 花は1週間ほどで枯れてしまうというお話でしたが、田中さんが作るフラワーアートの花は長持ちすることで有名だそうですね。

田中 それほど差はありませんが、手をかけているのは確かです。花は刈り取ってしまうと、刻一刻と死んでいきます。どう生きてもらうかは自分の手にかかっていますので。

石川 生きてもらう、という表現は面白いですね。具体的にはどういう方法ですか。

下から花や草が伸び、上から枯れた花の種が落ちる。生の循環を表した

下から花や草が伸び、上から枯れた花の種が落ちる。生の循環を表した

田中一般の人は花の茎を束で持ってはさみで切ると思いますが、僕は一本一本、カッターナイフで切ります。その方が、気持ちが伝わると思うからです。ちゃんと理屈もあります。水を吸う断面を極力大きくするため、斜めに切るのもカッターの方が簡単です。また、茎を切ると刃にバクテリアが付きます。これをそのままにしておくと、次に茎を切るときにバクテリアが付いて腐りやすくなりますが、カッターナイフだと刃を頻繁に替えられます。もう一つ、人間の皮膚と同じで、スパッと切れ味のよい刃物で切る方が、花も傷の治りが早いかなと思うのです。これは理屈ではないかもしれませんが(笑)。

石川 へえー、そこまで考えているんですか。

田中 花は人間のエゴで切られているわけですから、自分がどれだけ気持ちを込められるか。そこにはこだわりたいのです。

石川 田中さんの「花の命」にこだわる考え方が端的に表れているのが、最近、東京・二子玉川の蔦屋家電で展示した作品だと思います。台の上に花や草が生けてあり、しばらくして枯れたものを、その真上にある棚につり下げていくんですね。

田中 枯れた花からは種が落ちて、また下から芽吹いていく。この作品は、蔦屋家電の店内でパナソニックと資生堂がコラボレーションの展示をするので、コラボを象徴するようなフラワーアートをコンセプトから考えてほしいという依頼でした。美容家電と化粧品なので「あるがままの美しさ」というテーマを考えましたが、本来は自然に咲いている花が一番美しい。それをどう表現するか、悩んだ末に、生の循環で表せないかと思い付いたのです。

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