家族で移行なら検討したい 格安SIMのシェアサービス
進学や就職などを機にスマートフォン(スマホ)を購入する人は多い。ただ、端末代金に加え、毎月の通信料金がかかるため、家計を圧迫するのが悩ましい。家族向けの割引やサービスを活用したり、通信会社を乗り換えたりして通信料金を抑えたいところだ。そんな家庭にお薦めなのは、安さで人気の「格安SIM」だ。家族向けサービスがある格安SIMに家族全員で乗り換えれば、大手の携帯電話会社の家族向け割引サービスよりもコストを抑えられるはず。今回は、スマホの契約を見直したい家族向けに、格安SIMの選び方を伝授。後半ではお薦めの格安SIMを4つ紹介する。
家族でお得なシェアプラン
選び方の1つ目のポイントは、家族で乗り換えることでお得になるサービスがあるかどうかだ。
例えば、複数の回線で通信容量を分け合える「シェア対応プラン」の有無。シェア対応プランでは「当月に使える通信容量を分け合う」タイプが一般的で、1つの契約に対して複数枚のSIMカードが発行される。
2枚目以降のSIMカードにかかる月額料金は個別に契約するよりも安いので、家族が別々に契約するよりも通信コストを安く抑えられるのだ。
「前月から繰り越した通信容量だけを分け合う」タイプのシェア対応プランもある。契約そのものは1人ひとりが個別に結び、容量をシェアしたい家族同士でグループを組むことで、繰り越した容量を分け合える仕組みだ。
家族それぞれが個別に契約するので、「携帯電話・PHS番号ポータビリティー」(MNP)制度を使うときに、名義をそろえてから乗り換える手間を省ける。また、その月の通信容量は分け合わずに使えるので、誰か1人が通信しすぎても全員に与える影響は少ない。
この他にも、2回線目以降の月額料金が毎月500円ずつ値引かれる「UQ mobile」や、家族間の通話料が2割引になる「IIJmioモバイルサービス」のように、家族向けの割引サービスを提供する格安SIMもある。
家族に持たせても安心な格安SIMを選ぶ
2つ目のポイントは、未成年の子どもやシニアでも安心して使えるサービスがあるかどうかだ。
未成年者が安心してインターネットを利用できるようにと定められた「青少年インターネット環境整備法」により、18歳未満が利用する場合はフィルタリングサービスの提供が義務付けられている。
大手携帯電話会社の「キッズスマホ」などでおなじみのサービスだが、格安SIMでもフィルタリングサービスは提供されている。格安SIMを販売するMVNO(仮想移動体通信事業者)のなかには独自の見守りサービスや、キッズスマホのようにフィルタリングや見守りに特化したスマホを販売している事業者もある。
例えば「トーンモバイル」では、Webサイトやアプリのフィルタリング、端末の利用時間制限といったペアレンタルコントロール機能に加えて、端末の位置情報や歩数を確認できる見守り機能などがセットになった「TONEファミリー」を提供している。子どもはもちろん、遠隔地に暮らす両親などシニアの見守り用途にも向いている。
「UQ mobile」では、Webサイトとアプリのフィルタリングを行う「あんしんフィルター for UQ mobile」を無料で提供。「イオンモバイル」では、フィルタリングサービスの「スマモリ」(月額371円)、モニタリングサービスの「Filii」(月額371円、3台までモニタリング可能)を含む、子ども向けのアプリ11本がセットになった「子どもパック」を月額150円で提供している。
子どものスマホに格安SIMを選ぶのであれば、こうしたフィルタリングや見守りのオプションが充実したMVNOを契約するのがいい。
パターン別お薦めの格安SIM
それでは、「家族でお得」と「家族で安心」の2ポイントを踏まえて、4つのパターン別にお薦めの格安SIMを紹介しよう。
【お薦め1】スマホを活用する家族に「IIJmioモバイルサービス」
SNSで活発にコミュニケーションしたり、動画をよく視聴したりと、スマホを積極的に活用する家族にお薦めなのが「IIJmioモバイルサービス」だ。
IIJmioモバイルサービスでは、当月の通信容量を分け合えるシェア対応プランを提供。月12GBまでの「ファミリーシェアプラン」では、合計10枚(音声付きSIMは合計5枚)までSIMカードを利用できる。
通信容量を増やせる「大容量オプション」も用意されており、毎月20GBなら3100円、30GBなら5000円、50GBなら8100円で追加可能だ。
また、シェア対応プランにおける契約回線同士の通話料は2割引になる。IIJmioの通話料割引サービスと併用すれば、家族間の通話料は30秒当たり8円。音声通話が多い家族も安心だ。
【お薦め2】ライトユーザーが多い家族に「UQ mobile」
スマホは使うけれど、動画やSNSの利用はほどほどというライトユーザーが多い家族には、リアル店舗の整備を進める「UQ mobile」がいいだろう。
UQ mobileでは2種類のセットプランが主力。短めの通話が多ければ各国内通話の最初の5分間が無料になる「おしゃべりプラン」、長電話もするなら毎月一定の無料通話分が付く「ぴったりプラン」を選ぶのがいい。通信容量はどちらも月1GBまで、月3GBまで、月7GBまでの3種類から選べる。
また、家族で契約すれば、2回線目から10回線目までの月額料金がそれぞれ500円引きになる「UQ家族割」が適用されるのもメリット。故障時の端末保証、フィルタリングや見守りといったオプションサービスも充実しているので、スマホの扱いに不慣れな子どもがいる家庭でも使いやすい。
【お薦め3】手間なく乗り換えたい家族に「mineo」
なるべく手間をかけずに格安SIMへ乗り換えたい家族には「mineo」がいいだろう。mineoでは、前月から繰り越した通信容量だけをグループ内のメンバー同士で分け合うタイプのシェア対応オプション「パケットシェア」を提供している。グループを組む相手はmineoユーザーなら誰でもいいので、大手携帯電話会社から乗り換えるときに家族全員の名義を統一しなくてもいい。
なお、パケットシェアのグループメンバーはいつでも追加できる。家族それぞれの更新月がずれていて、乗り換えのタイミングがそろわなくても問題ない。
また、mineoはNTTドコモとauのネットワーク両方に対応しており、ドコモに加えてauで購入したスマホにもmineoで利用できる機種が多い(ただし、機種によってはSIMロックの解除が必要となる)。mineoに対応したスマホを用意する手間と出費を省きやすい。
【お薦め4】子ども向けの機能が充実した「トーンモバイル」
格安SIMでも安心して子どもに持たせたいなら「トーンモバイル」が適している。
トーンモバイルでは、アプリのフィルタリングや端末の利用時間制限といったペアレンタルコントロール機能、位置情報の検索や歩数確認などの見守り機能がそろった「TONEファミリー」(月額200円)、およびWebサイトのフィルタリング機能を備えた「あんしんインターネット」(月額100円)を提供している。
対応機種はトーンモバイルオリジナルのAndroidスマホ「TONE」シリーズと、アップルの「iPhone」シリーズ(iPhone 5s / 5c以降のSIMフリー版とNTTドコモ版、SIMロック解除済みのau版・ソフトバンク版だ。
フィルタリングや利用制限を有効化するには初期設定が必須だが、トーンモバイルではTONE取扱店の店頭でサポートを行っている。また、子どもと話し合いながら制限範囲を決めたい保護者のために、必要事項を記入して撮影するだけでペアレンタルコントロールの内容を決められる専用シート「親子スマホの約束」も用意されている。
料金プランは最大通信速度が500k~600kbpsのデータ通信専用プランが基本。IP電話機能が標準で付属しており、月額料金は1000円(iPhone向けのサービスは1500円)だ。必要に応じてSMS機能や携帯電話番号による音声通話機能、通話定額オプションなどが追加できる。
最新機種の「TONE m17」は富士通コネクテッドテクノロジーズ製で、MIL規格のタフネス性能やおサイフケータイを装備。子どもと保護者がそろってTONEを使っていれば、子どものTONEファミリーおよびあんしんインターネットの月額料金が無料になる。
ヘビーユーザーには向かないが、国産スマホらしい機能もそろっている。保護者がライトユーザーなら、一緒に乗り換えるのもいいだろう。
(ライター 松村武宏)
[日経トレンディネット 2018年4月17日付の記事を再構成]
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