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早熟のピアニスト斎藤雅広 生涯現役の秘策

2018/4/28

 親しみやすい人柄、誰もが認める高い演奏技術と音楽性は、椅子取りゲームの「戦場」で争うはずの同業者をも集める。「同じピアニストの友人が非常に多い。同業者の友達がいっぱいいるのは楽しい。同業者だから苦しみを分かり合えるし、助け合える。互いに刺激もある」。東京・渋谷生まれの都会っ子。都心の自宅周辺で音楽家どうしの宴会を繰り広げている。「ピアニストは孤独の職業みたいだけど、実は互いに友達になれるし、なったほうがいい」と説く。

多弁のエンターテイナーがみせる繊細な感性

 ピアニストどうしの仕事で旗振り役も務めてきた。「3大ピアノプロジェクトPIANO三重弾(さんじゅうびき)」というピアノ3台によるピアニストの共演企画だ。近藤嘉宏氏、松本和将氏、宮谷理香さんら著名ピアニストと共演した。杉並公会堂(東京・杉並)での同公演は2019年1月12日で10回を数え、若林顕氏、松永貴志氏、加羽沢美濃さんとともに弾く予定だ。クラシックの名曲がピアノ3台による華麗な重奏となって披露されるエンターテインメントだ。

インタビューに答えるピアニストの斎藤雅広氏(3月28日、東京都中央区のヤマハ銀座店)

 「出しゃばりといわれるが、むしろ人見知りするほうだった。おしゃべりコンサートを無理強いされるうちに慣れてきた。今ではあいつを黙らせろと言われるほど」。磨き上げた話術を背景に、語り自体の仕事も引き受けるようになった。5月2~4日に初開催となる「ばらのまち福山国際音楽祭2018」では、ピアノ演奏に加えて司会もこなし、プロコフィエフの交響的物語「ピーターと狼(おおかみ)」のナレーションにも挑戦する。

 多弁なエンターテイナーぶりを発揮しているかにみえる斎藤氏だが、ピアノ演奏では繊細な感性、デリケートで内省的な面をのぞかせる。デビュー40周年を前に2016年12月に出したCD「メランコリー」(発売元 ナミ・レコード)は、夢の詩のような、愛奏してきた小品を集めた。「僕を長年応援してくれた(ピアニストの)中村紘子さんが亡くなり、追悼の思いも込めてレコーディングした」と話す。

 40周年記念として今年1月に出したCD「ナゼルの夜会」(同)では、得意のスクリャービン「ワルツ変イ長調作品38」、プーランク「ナゼルの夜会」、シューマン「謝肉祭」を収め、演奏活動の総決算といった趣だ。特にプーランクとシューマンの作品では、変奏や小品が次々に表情を変えて登場し、軽やかな機転と洗練の中に深い情熱を注ぎ込んだ感動的な演奏だ。

 今後の抱負を聞くと、「死ぬまで弾き続けたい。より長く、より良く弾き続ける」と答えた。自分の世界があり、多くの仲間がいる。「戦場」が宴会の場に変わる。生涯現役への秘策がここにある。愛され続ける技を持つピアニストが音楽の輪を広げる。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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