徳島にIターンした元会計士 専門能力を企業でいかす地方移住は新時代へ(3)

徳島名物の阿波おどりの開幕式(2017年8月)
徳島名物の阿波おどりの開幕式(2017年8月)

大手監査法人で活躍していた公認会計士の矢野琢磨さん(41)は、徳島市でブライダル関連・バンケット事業などを手掛ける老舗企業ときわに新天地を求めた。東京から全く地縁のない徳島への「Iターン」だったが、「自然豊かで新鮮な食事にも恵まれた」。会計士本来の仕事とは縁が薄い業務に刺激を受けながら、家族ぐるみで新生活を楽しんでいる。

土地柄の良さで徳島移住を決断

矢野さんが「ときわ」に入社したのは、2017年9月。勤め先の新日本監査法人から徳島県鳴門市のベンチャー企業に出向していたが、そこでの仕事に一区切りがつき、そのまま徳島への本格移住に踏ん切った。子育てを通じて、この地で人的ネットワークを広げ、土地柄の良さになじんでいた妻の昌代さん(40)が決断を後押しした。

矢野さんは徳島に地縁も血縁もない。監査法人から鳴門市のベンチャー企業に最高財務責任者として期間限定で出向し、初めてつながりができた。上場を計画する同社では資金調達や株主への説明などの業務にまい進した。「仕事ありき」の転勤だったが、会計士としての知識とスキルを大切にされ、充実した生活を送っていた。

だが出向先での任務が終わりに近づくにつれ、「東京に戻るか、それとも家族がなじんできた徳島に残るか」と揺れ動いた。決断の決め手は、自然豊かで子育て環境にも恵まれた徳島で、家族との生活を充実させたいとの思いだった。

大手監査法人で活躍していた公認会計士の矢野琢磨さんは「大都市にいると地方に仕事がないと思いがちでだが、そんなことはない」と話す

徳島での仕事探しのために地元の人材会社に登録すると、ほどなく一つの会社を紹介された。財務面や経営全般に関わる人材を求めていたときわである。面接で高畑宏比会長と高畑富士子社長から、会社の理念とビジョン、求める人材像についての話を聞いた。そのとき進取の気性に心を動かされた。「新しいことにチャレンジしてみよう。ここで自分のスキルを生かしたい」。友人から「いい会社じゃない」との話を聞いていた昌代夫人も、すぐに賛成してくれた。

折しも、ときわは四国だけでなく沖縄や東京など全国的な事業展開と、ホテルやレストランなど事業の多角化を推進していたところ。財務が分かり、経営のサポートを担える人材を求めていたときわと矢野さんの思いが合致したのだ。「会社の風土を変えようと新たな人材、風を求めていた矢先、矢野さんとならうまくいくと採用を即断しました」。高畑社長は述懐する。

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