大谷選手と投資の達人 共通点は夢への情熱(渋沢健)コモンズ投信会長

「大谷翔平選手の目標設定シートには渋沢栄一の『論語と算盤』が記されていた」

米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平選手の投打にわたる活躍は日本のみならず、現地でも高い関心を集めている。ある機会があって、私は数年前に大谷選手が当時所属していた日本ハムファイターズに入団した後に記したという目標設定シートをじかに見た。

とても驚いた。目標の一つに「『論語と算盤(そろばん)』を読む」とあったからだ。「論語と算盤」は私の高祖父である渋沢栄一の講演録だ。初版は大正5年(1916年)に出ている。平成生まれの若いプロ野球選手が、「日本の資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一という人物の思想に、なぜ関心を持ったのか。

夢の実現こそが最優先、お金は二の次

知人の日ハム球団関係者によると、それは栗山英樹監督が「論語と算盤」を読むように若手選手に勧めているからだという。そうしたことが縁となって、栗山監督が4月初旬に出版した『育てる力』(宝島社)の最後の章に対談相手として登場させていただいた。

栗山監督にとって「論語と算盤」は「自分を知る」「どんなことも、誠実さを基準にする」「思いやりを大切にする」「公のために尽くす」といった自身の指導方針に反映されているそうだ。とてもありがたいことで、こうした内容は投資の世界でも十分通用すると改めて感じた。

著書には「絶対的な危機は、時にチャンスとなる」「見えない未来を信じろ」など数々の金言が収められているが、中でも印象に残ったのは「一流は金銭感覚も一流である」という言葉だ。

大谷選手は若手にとって金銭的には不利な条件の中で渡米した。しかしながら、栗山監督は「おカネはいらない。それよりメジャーでプレーしたい」という大谷選手の姿勢こそが大切だ、という。つまり、夢の実現こそが最優先であり、お金は二の次ということだ。

米ファンドの創業者、同時テロ後に基金

私がかつて在籍した米ヘッジファンド、ムーア・キャピタル・マネジメントの創業者、ルイス・ベーコン氏もそうだった。1990年代には同ファンドをソロス・ファンド・マネジメントや、タイガー・マネジメントといった大手ヘッジファンドに次ぐ存在に押し上げた投資の達人だ。彼の日々の行動を観察すると、夢は熱く語っても「カネもうけ」の匂いはあまり感じられなかった。

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