「~ねばならない」「~するべし」とかつてのトラッド世代は口うるさく言われてきた。だが時代は移り変わるもの。いつまでも過去のルールを墨守するだけで良いのだろうか?
まずおさらいしよう。
スタンダードとは品格ある装いの “指針”であることを
最も一般的な社会的正装ゆえ、様々なルールがあるスーツの装い。だがそこに、自分らしい装いの余地はないのだろうか。そのルールはどこまで遵守すべきか。
「時代の洒落者たちは、ルールを知った上でそこに自分なりのアレンジを加えてきました。よりエレガントに見せるために靴でハズシたり、ジャケットのボタンの掛けかたを変えてみたり。最初は邪道に見えても、よりよく見せようという工夫はその人のスタイルを表すものとなり、新しい表現方法として定着するのです」と語るのは服飾評論家 黒部和夫さん。型、つまりスタンダードを知った上で変化球的な自分の見せ方を考えられるかが、トラッドを進化させる鍵となる。
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STANDARD 1:ビジネススーツの基本色はネイビーかグレー
グローバルのルールでは、ビジネススーツの色はネイビーまたはグレーとされる。どちらも濃色ほど正装とされ、トーンが明るくなるほどカジュアルな印象となる。黒いスーツは日本では礼装用、あるいはフレッシャーズや就職活動中の学生が好んで着るが、欧米では黒いスーツをビジネスで着るのはご法度。黒は盛装着としてパーティウェアやモードなデザイナーズスーツに選ばれる色である。
STANDARD 2:黒無地タイは弔事の必需品
モードな装いでの黒無地タイ、というのもあるが、一般にはプレーンな黒無地タイといえば弔事の必需品。シルク地の黒無地タイを、デスクの引き出しや会社のロッカーに忍ばせている人もいることだろう。ブラックスーツと合わせて礼装に用いるものだが、急なご不幸に駆けつけるためには、普段着のスーツに合わせても良いとされる。