最初の顧客は伊藤博文 明治元年からスーツづくり神戸・元町の柴田音吉洋服店(上)

旧千円札に描かれた伊藤博文の肖像=PIXTA

――初代兵庫県知事は後の初代首相、伊藤博文でした。音吉にとって最初の顧客のひとりです。伊藤は幕末に英国留学した開国派で、明治政府でも西洋化への強力な旗振り役でした。

「伊藤のために作ったフロックコートが一着残っています。1995年の阪神大震災で店舗は倒壊しましたが、鉄筋レンガ造りの倉庫で保管しておいたので無事でした」

■伊藤博文、新しもの好き音吉に目をかける

柴田音吉洋服店に伝わる「伊藤博文のフロックコート」

――コートを見ると伊藤の背丈は150~160センチメートルに思えます。

「約150年を経てコート地はある程度縮んでいます。このため正確な身長は分かりません。生地はドスキンです。牝鹿の皮に似せて作られた英国産の厚地紡毛織物で、目の詰んだビロードのような光沢があるフォーマル用の生地です」

――神戸市に「日本近代洋服発祥の地」という碑があるのも、布地を輸入していた貿易港だからですね。伊藤はどうして音吉に目をかけたのでしょうか。

「音吉は溌剌(はつらつ)として機転が利き、新奇なものを好む少年だったようです。炭火式のアイロンを取り入れたり、晩年は世界一周旅行へ出かけたりして、新しもの好きは生涯変わりませんでした。伊藤博文はそんな点が気に入ったのでしょう。後に明治天皇の礼服をあつらえるために東京へ連れて行ったりしています」

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