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ギョギョッ!街中の釣り堀 遊園地やカフェで若者誘う

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NIKKEI STYLE

海の大物釣りから極小のタナゴ釣りまで、日本には世界有数の釣り文化がある。ところが近年は参加人口の減少や高齢化が進み、関係者に危機感がつのっている。「次世代に釣りの魅力を伝えたい」との釣り好きの思いが生んだ都市型釣り堀が人気を集めている。

 ◇   ◇   ◇

東京都練馬区の遊園地「としまえん」のプールは、5月の連休まで釣り堀になることを知っているだろうか。3種のプールでエサ釣りのほか、ルアー&フライフィッシングも楽しめる本格派だ。

プールを泳ぐ練馬サーモン

この「としまえんフィッシングエリア」支配人の皆川界さん(36)は、「初心者でも楽しめる放流量の多さと魚種の多彩さが自慢」と胸を張る。釣れる魚はニジマス、アマゴ、イワナ、ブラウントラウト、イトウなどで、人気なのは最大で体長80センチメートル以上になる「練馬サーモン」。サイズに加えサケのような赤身は食味も良く、常連の多くはこの練馬サーモン狙いだ。

「練馬と名付けたが、実は富士山麓のきれいな水の養魚場出身なので、ぜひ刺し身で味わってほしい」と皆川さん。土日祝日は釣った魚をその場でさばいて食べられる魚焼き場も利用でき、家族連れでにぎわっている。

しかし、皆川さんには危機感がある。それは若者の釣り離れだ。「釣りという趣味は、究めると道具や遠征でお金と時間が必要で、若者には敷居が高い。うちの客層も10~20代が少ない」と嘆く。

かつては不況に強いといわれた釣り。しかし「レジャー白書」(日本生産性本部)によると、2006年に1290万人だった釣り参加人口は、16年に690万人とほぼ半減した。今や釣り人のボリュームゾーンは40代以上の中高年だ。業界には、若者に釣りの魅力を知ってもらいたいと頭を悩ませている人が少なくない。

ミニ高級魚、釣って食べて

しかしそんな最中の16年、としまえんに近い西武池袋線練馬駅近くに「Catch&Eat」というカフェスタイルの室内釣り堀がオープンして話題となった。魚は琵琶湖原産のホンモロコだ。成魚の体長が10~15センチメートルの小魚で、琵琶湖産は京都市内の料亭などに高値で卸される。近年は関東や東北でも養殖されており、この"小さな高級魚"を売りにしたところ人気を呼んだ。17年には若者が集まる東京・吉祥寺に2号店をオープンすると、テレビ番組でも取り上げられ、若者や女性の来客が急増した。

「女性客は好きなアイドルが出ているテレビ番組やインスタグラム経由での来店が多い。釣り堀というよりユニークなカフェとして来店され、リピーターになってくれた女性グループが何組かいる」と、Catch&Eat吉祥寺店店長の笹原薫さん(51)は話す。

JR吉祥寺駅北口から徒歩5分ほど、裏通りのビル2階にある店内は壁面にチョークアート風のポップなイラストが描かれ、直径4メートルほどの円形テーブルが3つ並ぶ。テーブルの中央部分は魚が泳ぐプールで、周囲を取り囲んでいるスツールが釣り座だ。

レジで1時間1500円の料金を払い、ドリンクを注文すると、店員が仕掛け付きのさおとエサが入った小皿を持って釣り座まで案内し、初めての客には釣り方をレクチャーしてくれる。

目の前のプールをのぞくと魚がたくさん泳いでいるが、初体験だと意外に苦戦する。しかし、程よい難しさは釣りを飽きさせない効果も生む。制限の10匹を釣ると、釣った魚を店員が天ぷらか唐揚げにしてくれる。特に天ぷらはホンモロコ独特の風味とうまみがよくわかる。

「店名にEatとうたうからには、味にはこだわった」と笹原さん。オープン前、関東各地の養魚場でホンモロコを食べ歩き、いちばんおいしかった静岡県富士市の養殖業者から魚を取り寄せることにしたという。

国内外の釣り堀事情に詳しいフライフィッシング専門誌「フライの雑誌」編集人の堀内正徳さん(50)は「今までにない業態で、関東人が知らなかったホンモロコのおいしさを教えてくれた」と「Catch&Eat」を評価する。「実は都市生活と釣りは相性がいい。台湾やベトナムではエビを釣って食べさせる室内釣り堀が若者のデートスポットになっている」

近年は減少の一途をたどっていた都市の釣り堀だが、ユニークな魚種や営業スタイルの開拓によって、若い世代が気軽に楽しめる新しい街遊びスポットとしての復権もあるかもしれない。

(ライター 大谷 新)

[日本経済新聞夕刊2018年4月21日付]

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