ダイソンの新空気清浄機 「空気の質」液晶で見える化
ダイソンは2018年4月12日、新型の空気清浄機「Dyson Pure Coolシリーズ」を発売した。ラインアップは床置き用の「タワーファン」とテーブルなどに置ける「テーブルファン」の2機種4モデル。見た目は従来モデルから大きな変化はないが、中身はかなり進化して使い勝手が向上している。
PM 2.5のレベルを本体液晶に表示
大きな特徴は、液晶ディスプレーと3種類のセンサーを搭載した点にある。ダイソン ヘルス アンド ビューティー部門バイスプレジデントのポール・ドーソン氏は「レーザーダイオードで微粒子の大きさや濃度を検出できる微粒子センサー、NO2(二酸化窒素)、ベンゼンやホルムアルデヒドなどのVOC(揮発性有機化合物)を検出できる有害ガス・ホコリセンサーに加えて、温度・湿度センサーを備えている」と語る。
リモコンの「i」ボタンを押すと液晶ディスプレーに空気質、PM2.5、PM10、VOC、NO2、温度、湿度がグラフ化もしくは数値化されて表示されるようになっている。センサーが空気の汚れを検知すると、即座にディスプレーに反映される仕組みだ。
従来モデルでも、無料の専用アプリ「Dyson Link」(Android/iOS対応)で空気質と温度・湿度をグラフ化して表示していたが、新モデルでは、スマホアプリをわざわざ開かなくてもリアルタイムで室内の空気環境が一目で分かるようになったのが大きな進化だろう。ちなみに、Dyson Linkアプリもアップデートし、上で紹介したPM2.5やPM10、VOCなどのグラフが確認できるようになっている。
フィルターが大型化し、空気清浄機能もアップ
従来モデルでは本体上部の送風口部を取り外し、上からフィルターをかぶせるスタイルだったが、新モデルは前後から取り付けるスタイルに変更された。約9メートルもあるHEPAマイクログラスファイバーを200回以上折り畳んだ高密度フィルターは、PM 0.1レベルの微細な粒子を99.95%除去するという。また、従来のフィルターと比べて活性炭を3倍以上に増やしたことにより、ホルムアルデヒド、ベンゼンなどの有害なガスやニオイをさらに多く吸収するとも。
空気清浄能力の適用床面積はJEMA(社団法人日本電機工業会)規格でタワーファン、テーブルファンともに12畳(30分で清浄)、自社基準に基づく数値として、タワーファンが34畳(同)、テーブルファンが36畳(同)としている。
ドーソン氏はここで紹介している自社基準について、「センサーでインテリジェントに検知するだけでは不十分で、部屋全体が正しく清浄されていることが必要だ」と語る。
「JEMAの規格では約10平米の部屋にファンがあり、汚染物質を拡散させて1つのセンサーが空気質を測るというものだが、これを見る限り、平均的な日本の住宅環境を反映するとは思えなかった。そこで業界標準テスト以上のテストを開発した」(ドーソン氏)
ダイソンが開発したのが「POLARテスト」というものだ。
「約27平米の部屋に毛髪の300分の1程度の物質も検知できるセンサーを9つ設置し、5秒ごとに空気質データを集めるというもの。オートモードにした機器を置き、反対側から汚染物質を出し、機械が感知できるかを見る。空気がきれいになったと機械が判断した段階で各センサーの数値を確認し、その性能を測る」(ドーソン氏)という。
1年を通して使いやすいように送風機能も進化
送風機能も進化した。従来モデルは首振りが70度のみだったが、新モデルでは45度、90度、180度、350度の中から選べるようになった。これにより室内の空気を循環させやすくなっている。
「350度の首振りによって、毎秒290リットルの空気を循環させ、部屋全体の空気を清浄できる」とドーソン氏は自信を見せていた。
さらに、「空気清浄ファンは1年を通して使用するもの。暖かい日はファンモードでいいが、冬は寒すぎるという声があった。そこで『ディフューズドモード』という送風モードを新たに搭載した」(ドーソン氏)。
従来モデルまでは、送風口の前方に空気を送るというものだった。新搭載のディフューズドモードは、送風口の後方斜め上に風を送ることで、前方にいる人に直接風が当たりにくい仕組みになっている。確かに真夏なら風が当たってもいいが、真冬に風が直接当たると寒いので、これはうれしい進化だろう。
パッと見では分かりにくいが、かなり大幅な進化
新Dyson Pure Coolは、従来モデルから見た目ではそれほど大きな変化がないように思える。しかし筆者から見ると、かなり魅力的なモデルに進化したと感じた。
2017年3月の内閣府の調査によると、空気清浄機の普及率は43.8%とのこと。中国のように大気汚染が深刻化していない日本ではこの程度なのかもしれない。しかしPM2.5は常に問題になっており、花粉症をはじめとするアレルギー罹患者もここ20年ほどで微増傾向にある(厚生労働省 健康局 がん・疾病対策課の調査より)。それでも普及が進まないのは、空気清浄機の効果が見えないことにあるのではないだろうか。
こうした流れを変えたのが、スウェーデンの空気清浄機メーカー、ブルーエアの「Blueair Sense+」やダイソンの「Dyson Pure Cool Link」などの海外勢で、スマホアプリと連携することで空気の見える化を実現した。国内メーカーでもシャープ、ダイキン工業がスマホ連携の加湿空気清浄機を発売し、パナソニックも見える化を実現した空気清浄機能付きエアコンを発売した。しかしどれも空気清浄効果を確認するためにはスマホアプリが必要だった。
液晶付きのDyson Pure Coolの魅力は、一度セッティングしてしまえば、リモコンのボタンを押すだけで空気環境を確認できること。オートモードにしておくと空気の汚れを検知したときにファンが動き出すのだが、そのときに検知したのがPM2.5なのか、VOCなのか、NO2なのか、リモコンのiボタンを押すだけで確認できる。空気清浄機の効果や性能に懐疑的な人こそ、その魅力を感じられるのではないだろうか。
IT・家電ジャーナリスト、家電製品総合アドバイザー。デジタルAV機器を中心に、デジタルガジェットから白物家電まで幅広く取材・執筆している。All About「タブレット・電子書籍端末」「iPad」「パソコン周辺機器」「オーディオプレーヤー」「スピーカー」などのガイドも務めている
[日経トレンディネット 2018年4月13日付の記事を再構成]
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