リーダー層は年功序列打破を デジタル世代活用がカギ
ダイバーシティ進化論(村上由美子)
米フェイスブックのデータ不正流用問題を巡る米議会の公聴会では、最高経営責任者のマーク・ザッカーバーグ氏と議員の厳しい質疑応答が繰り広げられた。データ利用を巡る環境整備が不十分であるとの現実を認識させられると同時に、世界経済成長の主役であるデジタル経済への理解度を巡る世代間格差を如実に感じる1件だった。33歳のザッカーバーグ氏の親世代にあたる議員からはピント外れの発言が多く、ザッカーバーグ氏が議会より上手とも報道された。
デジタルネーティブの若者たちは、デジタル知識や技能において上の世代より圧倒的に優位である。現代の原油と言われるデータをいかにビジネスに活用し、新たな活路を見いだしていくかが、企業成長を決定づける時代。デジタルネーティブ世代が経営の中核でどこまで戦略的に活躍できるかが勝負どころになる。
空前の採用難に直面する日本企業にとって、今月入社した新入社員の希少価値は今まで以上に高いはずだ。昭和生まれの管理職からは期待できない発想や感覚を持つ彼らを人財として位置付け、本領発揮させる人事制度や社風を構築しなければ、人材獲得戦争で負けてしまう。
日本能率協会の調査によると、いまの新入社員は年功序列より成果主義を好む層が過半数という。今後さらに人口減少が進む日本では、年功序列から成果主義への移行を成功させた企業だけが生き残れるといっても過言ではないかもしれない。リーダー層年齢のダイバーシティ促進が必須だ。
私がハーバード・ビジネススクールで一緒だった日本人留学生の大半は大企業からの派遣だった。だが、卒業後まもなくほぼ全員が退社してしまった。入社年次や勤続年数が重視される人事制度に限界を感じ、社外に活躍の場を見いだすことを選択したのだ。将来を有望視されていたはずの貴重なグローバル人材を有効活用できなかった日本企業が失ったものは大きい。
日本を取り囲む環境は、一層グローバル化が進んだ上、デジタル化によって革命的な変化が社会及び経済にもたらされている。今ほど、日本企業にとって若い力が必要なときはない。ザッカーバーグ氏のような経営者と互角に渡り合うためには、デジタルネーティブの声を意思決定プロセスにしっかり取り入れていくしか道はない。成功の鍵は、若者が握っている。
経済協力開発機構(OECD)東京センター所長。上智大学外国語学部卒、米スタンフォード大学修士課程修了、米ハーバード大経営学修士課程修了。国際連合、ゴールドマン・サックス証券などを経て2013年9月から現職。米国人の夫と3人の子どもの5人家族。著書に『武器としての人口減社会』がある。
[日本経済新聞朝刊2018年4月23日付]
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