「どんな世界でもシャツの定番はやはり白かサックスブルー(淡い青)」と、佐々木さんはあくまでも基本に忠実だ。この日、着用していたのは左右の襟を束ねるタブカラーのシャツ。選んだ理由を尋ねると、自らを表現することへのこだわりを語ってくれた。
「最近の主流はセミワイドカラー。ネクタイを締めてタイドアップしたときに表現がしやすいのが特徴です。でも私がきょう選んだものはタブカラー。他のものに比べて襟元が締まった印象になります。トレンド感を演出するという意味もありますが、表現の受け皿が狭いだけに、自分自身が試されることになります」
■引き締めた襟元でさりげなく
表現の受け皿とは何か。
「結局のところ、スーツを自分なりに楽しむには襟元のVゾーンや小物選びしかありません。他はほとんど差がないに等しいのです。自分がきょう3ピースを着ているのもそういう理由からです。2ピースではなく、3ピースを選べばVゾーンはますます狭くなる。それはクラシカルな印象を強めると同時に、表現の幅を狭くすることになります。その表現の幅を狭めるということが、さりげなさをつくる鍵になるのです」
佐々木さんがこの日めざしたのは、どのような「さりげなさ」だったのか。
「きょう選んだのは定番の白シャツ。そこに春の華やかさを表現するような大柄のストライプを合わせました。ジャケットが無地に近いと大柄とのコントラストが映えるのです」
最後に、白シャツをベースに、もうワンステップ上のVゾーンをつくるとしたら、どんなタイを選ぶかを聞いた。
「華やかなシーン、あるいはエグゼクティブであれば、ペイズリー柄を選んでみてはいかがでしょうか。年齢を重ねた貫禄がある人であれば、より魅力が増すはずです。さらにスーツのネイビーに茶色のタイを合わせれば、クラシックな印象をより強めてくれるので、一段と貫禄を醸し出してくれるでしょう」
※表示価格は税抜きです。
文:FACY編集部 溝口駿介(https://facy.jp/) 写真:加藤潤
「プロのコーデ」記事一覧
SUITS OF THE YEAR 2021
アフターコロナを見据え、チャレンジ精神に富んだ7人を表彰。情熱と創意工夫、明るく前向きに物事に取り組む姿勢が、スーツスタイルを一層引き立てる。