エンタメ!

井上芳雄 エンタメ通信

『1984』での挑戦 役作りに終わりなし(井上芳雄) 第20回

日経エンタテインメント!

2018/4/21

井上芳雄です。4月12日から新国立劇場小劇場(東京・渋谷)で『1984』という舞台に出ています。英国の作家ジョージ・オーウェルが1948年に書いた小説を、ロバート・アイクとダンカン・マクミランの2人が新たな視点で2013年に戯曲化した作品です。全体主義の国家によって思想や言論、行動などのすべてが監視、統制されている社会で生きる人々を描いています。演出家の小川絵梨子さんと組むのは初めてで、台本の読み方や表現の仕方に新しい試みがたくさんあります。

『1984』は5月13日まで東京・新国立劇場小劇場、5月16、17日 兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、5月20日 愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホールにて上演(撮影:宮川舞子)

僕が演じる主人公のウィンストンは、真実省で日々歴史記録の改ざん作業をしている役人です。市民は街頭のテレスクリーンを通して、独裁者ビッグブラザーに24時間監視されており、ものを考えたり書いたりする行為は「思考犯罪」として逮捕される。そんな体制に不信感を抱いたウィンストンは、日記を書くことで反抗しようとしますが、その結果、101号室という独房に入れられ、残酷な拷問を受けることになります。

物語はちょっと複雑な構造になっていて、幕が開くと、2050年以降の世界に生きる人たちが『1984』に書かれた時代を振り返っている場面から始まり、やがて彼らは小説の世界に入っていきます。ウィンストンの記憶も混濁していて、未来になったり、1984年になったりを繰り返します。演じていても、自分が何者で、どんな状況に置かれているのかが最初はよく分からず、戸惑いの多い設定やストーリーでした。

演出の小川さんも、稽古が始まる前に「分からないところが多すぎる」と言っていました。それで最初は、俳優同士で『1984』の世界が本当に幸せなのかを討議する模擬裁判のようなゲームをしたりして、台本の読み解きから稽古が始まりました。

小川さんは米国で演劇の勉強をされてきた方で、ニューヨークのアクターズ・スタジオ大学院演出部を卒業されています。「日本の俳優さんは大変だと思います」と言われてました。欧米の俳優はアクターズ・スタジオの演技スタイルが共通言語のようになっているけれど、日本はいろいろな演劇や表現の形態があり、演出家によってもメソッドが違う。俳優は系統立てて演技を勉強しているわけではないので、異なる演技スタイルの俳優同士が同じ舞台で芝居をすることになって大変でしょうと。

エンタメ! 新着記事

ALL CHANNEL