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食の豆知識

「家カレー」の変 ついにレトルトがルーを抜き主流に

2018/4/25

多様性を増すレトルトカレー市場

意見が分かれるのは、市販のカレールーを使う場合。ここが手作りかどうかの分岐点だ。というのも、カレールーは意外に歴史が新しく、世代によって感じ方が違うからだ。

カレーは江戸末期に日本へ伝わったとされ、明治、大正、昭和とカレーはずっとカレー粉を使って作られていた。日本初のカレールーとされる「オリエンタル即席カレー」が1945年に発売され、その後キンケイ食品工業、エスビー食品、ハウス食品、江崎グリコといったメーカーが次々と参入する。そのため、カレー関連本をみると、本によっては「1960年代にはカレールーが当たり前になった」などと書かれていたりもする。

しかし、過去の料理本や婦人雑誌の付録などを見ると、少し温度差を感じる。というのは1960年代はもちろんのこと、1970年代になってもまだレシピ本にはカレー粉の文字しか見られないからだ。すでに店頭には、数多くのルーが売られていただろう。だが1970年ころの家庭では、まだ「カレールーは使うけど手抜き。本当のカレーはカレー粉で作るべきだ。なぜなら料理本に書いてある」という意識があったのではないだろうか。今回多くの方に話を聞いたが、何人かから「自分はカレールーに抵抗はないが、親の世代は手抜き感があるようだ」という意見があった。10年前ならもっと多かったに違いない。

1968年にはついに、日本初の市販用レトルトカレー「ボンカレー」が発売となる。その後たった50年で、レトルトカレーはカレールーを追い抜くところまできた。最近、私はスーパーへ行くたびに、レトルトカレーとカレールーの売り場面積を目算している。店によってはレトルトカレーの圧倒的な品ぞろえに対し、カレールーは10分の1くらいのスペースしかないところもある。客にとって食べるまでのハードルが低く、店にとっては保存がきき在庫しやすいレトルトは、今後ますます売り場面積を増やしていくだろう。

壁一面をレトルトカレーが埋めつくす店も

それでもまだレトルトカレーに偏見がある人へ、調べ物をしていて見つけた至言を贈りたい。なんと明治時代の料理書にも、大正時代の婦人雑誌にも、昭和10年の付録にも、昭和45年のおかず集にも「近頃はなんでも簡単、簡便に済まそうとする」という意味の文言が書かれている。きっと江戸時代の料理書にも、西洋や中国の料理書にも、エジプトのピラミッドの壁にだって同じようなことが書かれているはずだ(と思う)。

つまり人は、常に楽をしようと考える。そして楽をするためなら、死ぬほど努力をする。努力が集まるところはグイグイ進化する。ということは、レトルトカレーはこれからも大いに成長していくということだ。「ちょっとお高めのレトルトを常備しておいて、お客さんにお出しする」なんていうのは、もう当たり前の使い方ですぞ。

(食ライター じろまるいずみ)


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