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「家カレー」の変 ついにレトルトがルーを抜き主流に

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「家カレー」に異変が起きている。2018年3月30日付の『日経MJ』によると、レトルトカレーの購入額は2012年から伸び続けて2017年に461億円となり、初めてカレールーを上回ったという。一方、カレールーの購入額はジリジリと減少を続けている。家で食べるカレーはカレールーを使った手作りが普通だと思い込んでいたが、世の中の変化のスピードは私の予想よりはるかに早い。

カレールーの消費が減った理由としては、まず世帯の構成人数が減ったことが大きいと思われる。2015年の国勢調査によると、単身者世帯は全体の34.6%、夫婦や親子などの2人世帯を足すと6割を上回る。私の友人関係をざっと見渡しても、1人暮らしの人ばかりだ。単身者が鍋いっぱいにカレーを作れば当然余る。こんなにおいしいものがあふれている現代社会で、毎日カレーを食べるのはしんどいし、かといって毎回友人を招くわけにもいかない。レトルトなら自分の食べたい時に、1人分だけ用意できる手軽さがある。

またカレールーには、どうしても「調理をしないと食べられない」という高い壁がある。カレーとは子供の手遊び歌などで歌われるように、ニンジンやタマネギ、豚肉などをいためて煮込む料理である。料理が苦にならない人には「野菜と肉を切っていためて煮るだけの簡単料理」に見えるだろうが、料理をしない、またはできない人にはとてもハードルが高いものだ。

都合よく家に肉もタマネギもあったという場合は少なく、やはり材料を買いに行かねばならぬ。会社と家の間にスーパーがあればまだよいが、わざわざ遠回りする必要があるなら、もうやる気がうせてしまう。なんとか買い物できたとしても、野菜の皮をむいたり肉を切ったりで手は汚れるし、まな板などの洗い物が増える。お腹はすくし、テンションは下がる一方だ。こんな思いまでして作らなきゃいけないものなのか、と自暴自棄になることもあろう。

その点レトルトカレーは気軽だ。あまり料理をしなくてもご飯は炊けるという人も多いし、レンジで温めるだけのご飯も多くの種類が販売されている。カレー自体もお湯で温めるのではなく、袋ごとレンジにかけられるタイプが出てきて、ますます便利になっている。現代人は忙しく、食事の支度にそんなに時間をかけられない家庭も多い。いくら料理スキルがあっても時間がなくては料理を作れない。調理ステップの多いカレールーではなく、レトルトカレーを選ぶのは自然な流れなのだろう。

今やレトルトカレーの市場は膨らむばかりだ。自分で買い物に行く人は、スーパーや食材店で種類の多さに驚いたことはないだろうか。昔はいかにも日本的などろっとしたカレーしかなかったが、今や世界中のカレーがレトルトで食べられる。大手メーカーは次々と新製品を繰り出し、コンビニエンスストアやスーパーのプライベートブランド(PB)商品も増加の一途だ。街の有名店とコラボしたレトルトカレーは数えきれないほどあるし、牛肉やカキ、ナス、抹茶など地方の名産を取り入れた商品も爆発的に増えた。青や白、緑色をした変わり種、1人でも数種類のカレーを楽しめる少量パックのほか、温めずにそのまま食べられる商品まである。今後もあっと驚くレトルトカレーが生まれてくるのだろう。

また、ここ数年よく見かける陳列方法がレトルトカレーの魅力を増している。普通にパッケージの前面を見せるのではなく、図書館の本のように背表紙を見せる感じで並べるのだ。ごちゃごちゃした印象の食品売り場で、そこだけがシュッとスタイリッシュに感じられ、ついあれもこれもと手にとってしまう。店側としても同じスペースにより多くの商品が並べられる利点があり、うまい方法だと思う。

レトルトカレーにはレトルトカレーの良さがあると分かっていても、晩ごはんがレトルトでは寂しいと思う人も多い。読者の中には「料理と食べることが大好き」というタイプが多いと思われ、手作りしたい、手作りのものを食べたいという欲求も強いことだろう。

ところで、カレーにおける「手作り」とは何だろう。いったいどこまでが手抜きで、どこからが手作りと名乗っていいのだろう。

まず、誰もが「それは手作りと言っていい」と許してくれるのは、自分でスパイスなどを組み合わせるやり方である。調理の最初に使用するスターターとして、素材の形そのままのホールのクミンやマスタードシードをテンパリング(熱して香りを油に移すこと)する。同じくスパイスのヒングやタマリンドで風味をつける、カスリメティをトッピングするなどしていれば、誰からもそしられることはない。

次に市販のスパイスミックスを使う場合。こちらも一部のカレーマニアなどを除けば、堂々と「手作りカレー」を名乗ることができる。私も友人がインドへ出張に行くたびに「例の粉、買ってきて」と、いつものメーカーのマサラを頼む。ヘタに自分で組み合わせるより、よっぽどバランスの良いカレーができたりする。もちろん日本の誇る、赤い缶のカレー粉も大好きだ。

意見が分かれるのは、市販のカレールーを使う場合。ここが手作りかどうかの分岐点だ。というのも、カレールーは意外に歴史が新しく、世代によって感じ方が違うからだ。

カレーは江戸末期に日本へ伝わったとされ、明治、大正、昭和とカレーはずっとカレー粉を使って作られていた。日本初のカレールーとされる「オリエンタル即席カレー」が1945年に発売され、その後キンケイ食品工業、エスビー食品、ハウス食品、江崎グリコといったメーカーが次々と参入する。そのため、カレー関連本をみると、本によっては「1960年代にはカレールーが当たり前になった」などと書かれていたりもする。

しかし、過去の料理本や婦人雑誌の付録などを見ると、少し温度差を感じる。というのは1960年代はもちろんのこと、1970年代になってもまだレシピ本にはカレー粉の文字しか見られないからだ。すでに店頭には、数多くのルーが売られていただろう。だが1970年ころの家庭では、まだ「カレールーは使うけど手抜き。本当のカレーはカレー粉で作るべきだ。なぜなら料理本に書いてある」という意識があったのではないだろうか。今回多くの方に話を聞いたが、何人かから「自分はカレールーに抵抗はないが、親の世代は手抜き感があるようだ」という意見があった。10年前ならもっと多かったに違いない。

1968年にはついに、日本初の市販用レトルトカレー「ボンカレー」が発売となる。その後たった50年で、レトルトカレーはカレールーを追い抜くところまできた。最近、私はスーパーへ行くたびに、レトルトカレーとカレールーの売り場面積を目算している。店によってはレトルトカレーの圧倒的な品ぞろえに対し、カレールーは10分の1くらいのスペースしかないところもある。客にとって食べるまでのハードルが低く、店にとっては保存がきき在庫しやすいレトルトは、今後ますます売り場面積を増やしていくだろう。

それでもまだレトルトカレーに偏見がある人へ、調べ物をしていて見つけた至言を贈りたい。なんと明治時代の料理書にも、大正時代の婦人雑誌にも、昭和10年の付録にも、昭和45年のおかず集にも「近頃はなんでも簡単、簡便に済まそうとする」という意味の文言が書かれている。きっと江戸時代の料理書にも、西洋や中国の料理書にも、エジプトのピラミッドの壁にだって同じようなことが書かれているはずだ(と思う)。

つまり人は、常に楽をしようと考える。そして楽をするためなら、死ぬほど努力をする。努力が集まるところはグイグイ進化する。ということは、レトルトカレーはこれからも大いに成長していくということだ。「ちょっとお高めのレトルトを常備しておいて、お客さんにお出しする」なんていうのは、もう当たり前の使い方ですぞ。

(食ライター じろまるいずみ)

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