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ダウンサイズ時代の新型VWポロ もはやミニゴルフ?

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日経トレンディネット

フォルクスワーゲン・グループ・ジャパンが約8年ぶりにフルモデルチェンジした6代目となったコンパクトハッチバック、「ポロ」を2018年3月20日に発売した。税込み価格は209万8000~265万円。

近年は「up!」がVWで最も小さい「エントリーコンパクト」として活躍しているが、ポロは日本で「ゴルフ」までは必要としないものの、「質実剛健の小型ドイツ車」を求めるユーザー、特に女性に高い人気があり、VW定番モデルになっている。

ポロ初の3ナンバーモデルに

新型ポロは全てを刷新。最大の特徴は現行型ゴルフから採用している、VWのモジュラー戦略「MQB(Modulare Querbaukasten)」で開発した初のコンパクトカーであることだ。

新型のボディーサイズは全長が先代より60mm長い4060mm、全幅が65mm大きい1750mm、全高は10mm低い1450mmとなり、ついにシリーズ初の3ナンバーモデルに拡大。スタイルは先代の面影を残しながらも、より力強くスポーティーなスタイルに進化し、内外装とも質感が高められている。その結果、新世代VWデザインのキリリとしたマスクでよりゴルフに近い印象になったが、先代の面影と愛らしさを受け継いで、ゴルフよりも若々しいキャラクターに仕上げられている。

後席が広くなった

インテリアは実用性が高くドイツ車らしさを感じさせる。水平基調のデザインのダッシュボードは、ドライバーがエアコンやインフォテイメントシステムを操作しやすいように、中央部分がドライバーに向けて少しだけ角度を付けてある。またシートに座って感じるのは車内の広さで、車幅に加えてホイールベースも先代より80mm長い2550mmになった恩恵で、ここも「ミニゴルフ」に成長したと思わせるところだ。特に後席にゆとりを感じられるようになった。またラゲッジルームも先代より71L増え351Lとなり、使い勝手が向上している。

エンジンはさらにダウンサイジング

エンジンは先代よりさらにダウンサイズ化が進み、新開発の1.0L3気筒DOHCターボが全車に搭載される。最高出力95ps/5000~5500rpm、最大トルク175Nm/2000~3500rpmを発揮し、排気量を小さくしながらも性能は向上。トランスミッションは、DCT式の7速DSGを組み合わせ、燃費性能は19.1km/L(JC08モード)をうたう。

先進安全機能は上級モデルと同様に向上

MQBモジュールの採用により、上級モデルと同様の先進安全機能を採用することができるようになったのも大きな変化だ。

全車に歩行者検知対応シティエマージェンシーブレーキ機能付きのプリクラッシュブレーキシステム「Front Assist」、歩行者と衝突時に衝撃を緩和する「アクティブボンネット」、日中に自車の存在を強調する「デイタイムランニングライト」などを初搭載。さらに、後方死角からの接近車を知らせる「ブラインドスポットディテクション」や「全車速追従機能付きACC」、「リヤビューカメラ」、障害物検知に加え、前進・後退時衝突軽減ブレーキ付き「パークディスタンスコントロール」などをグレードによりオプションまたは標準で搭載する。

そのほかの装備の中でナビゲーションシステムはオプション設定だが、CDプレーヤーとBluetooth対応の「Composition Media」は全車に標準装備。これにより「Android Auto」や「CarPlay」などスマートフォンとの連携ができるので、スマートフォンナビで構わないという人には十分といえる。

装備によってグレードを選ぶ必要性

グレード構成は、エントリーの「トレンドライン」、中間グレードの「コンフォートライン」、最上級グレード「ハイライン」の3タイプを設定。トレンドラインは基本的な装備を搭載しながら税込み209万8000円からと価格を抑えてあるが、純正ナビや先進安全機能のオプション装着ができない。オプションを付けたい場合は、税込み229万9000円からのコンフォートライン以上を選ぶ必要がある。またLEDヘッドライトやスマートエントリーなど税込み265万円からのハイラインしか装備されないものもあるので、自分が装備に何を求めるかでグレード選択が決まる仕組みだ。

走りが格段に向上したが、新エンジンに弱点も

今回、試乗の機会も得たので簡単にレポートしておきたい。

3ナンバーになったことをネガティブに捉える人もいるかもしれないが、取り回しが悪くなるような影響はなく、車内やラゲッジルームが広くなったことの恩恵のほうが強く印象に残った。もちろん、ゴルフほど広くはないが、従来のポロに感じていた狭さは解消されたのではないかと思う、使い勝手の良さだ。

また走りも格段に向上した。従来型もドイツ車らしいしっかりした走りが魅力だったが、新型はボディー剛性が高められた恩恵もあり、ハンドリングや乗り心地も良い。例えば、車体が傾くカーブでもタイヤが路面をしっかりとられているのが感じられ、走りの安心感も強い。

唯一気になるのは、新しい1.0Lの3気筒エンジンのちょっとした弱さ。例えば巡行時、もう少し加速が欲しいシーンで軽くアクセルを踏み増したときに非力さを感じることがあるのだ。もちろんさらにアクセルを踏み込めば解決するのだが、エンジンの回転数が上がると今度は唸るようなエンジンノイズが気になってしまう。うるさいとまでは言わないが、心地よくはない音だ。ただ音に関しては、バランサーシャフトレスの3気筒エンジンの宿命かもしれない。通常の走行時なら、パワーやエンジン音などが気になることは少ないと思うが、ドイツ車らしい精密なエンジンを期待するとガッカリする人もいるはずだ。

とはいえクルマ自体の静粛性は高く、ほとんどのシーンでは静かで快適なクルマではある。そうした細かい注文を付けたくなるのは、MQBの採用で、クラス以上の魅力を備えたからこそともいえる。

もはやミニゴルフという表現も決して大げさではないレベルに進化したポロのキャッチコピーは、「カワイイだけで、生き残れる時代じゃないから。」だ。そのぶんガサツになったともいえるエンジンだけが、進化に追い付いていないと感じてしまうのだが、これはコストや燃費対策の結果なのかもしれない。今後、高性能なスポーツモデルの「GTI」などバリエーションが増えるだろうから、気になる人はしばらく様子を見るという選択もある。また上級モデルを狙い、サイズ的な制約がないなら、兄貴分となるゴルフもグレードによって射程距離であることを意識したい。

(ライター 大音安弘)

[日経トレンディネット 2018年4月12日付の記事を再構成]

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