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花が持つ価値を最大限引き出すのが自分の使命だと話す田中孝幸氏

花が持つ価値を最大限引き出すのが自分の使命だと話す田中孝幸氏

予防医学研究者の石川善樹氏が、自らの価値を世に問い続けている人々の思考法に迫る対談シリーズ。今回の対談相手は独自のアート作品のほか、ブルガリ、蔦屋家電など企業とのコラボでも注目されるフラワーアーティストの田中孝幸氏だ。雑誌編集から生花市場の仲卸を経て独立という異色の経歴の持ち主。「花と生きる」と覚悟を決めたきっかけは、世界的な巨匠との運命的な出会いだった。

人に借りを返せない自分がイヤ

石川 田中さんは花を題材にした作品をいくつも手掛け、フラワーアーティストという肩書を持っていますが、そもそも花を生けるという行為はアートと呼べるのでしょうか。生け花の場合は華道という言い方もありますよね。

田中 いきなり鋭い質問ですね(笑)。わかりやすいのでこの肩書を使っていますが、アートと呼べるのかどうか、実は僕もずっと考えているんですよ。絵画や彫刻などと違って、形として残らないですからね。表現とはいえるけど、アートと呼べるのかどうか。

石川 私の専門分野である料理と似ているかもしれません。生の食材を持ってきてテーブルに並べるだけなら料理とはいわない。切る、焼く、煮る、飾るといった多くのプロセスを経て、お客さんに出す瞬間には料理という形になっている。しかし、食べれば一瞬で消えてしまいます。つくるプロセスに思いをはせる人もいれば、はせない人もいますよね。

田中 花も同じですね。刈り取ってきて置くだけでは作品にならない。水につけて、どう管理するか、どう形にするか、作品になるまでには様々なことを考えます。そこに思いをはせてくれる人にとっては、一生記憶に残るものになるのかもしれませんね。

石川 もともと出版社で働いていたそうですね。どういうきっかけで花と関わるようになったのですか。

田中 高校時代から雑誌を作りたいと思っていて、大学を卒業して出版社に入りました。配属されたのは、米国のカルチャーやグッズを紹介する雑誌です。ただ、実際に取材してみて、自分が何も持っていないことに気付きました。人の体験談を聞いたり、知識を教えてもらったりして記事を書く。上司はそれが当たり前だというのですが、人の力を借りるばかりで返せないことが、素直に受け入れられませんでした。自分が何か返せるものを持ってから、借りるようになりたいと思い、会社を辞めました。

石川 自分に正直というか、自分をごまかせないんですね。辞めてどうしたのですか。

田中 自分の欲求の中で何が一番強いかを考えると、手で何かをガチャガチャと作ることでした。小さいころから器用に何でもこなしてしまうタイプだったので、今度は全く自分が触れたことのない分野で何かを作りたい……。それが花だったのです。すぐに近所の花屋に飛び込んで、働かせてくださいと頼みました。ところが、バラとカーネーションの見分けも付かない。「バカにしてるのか!」と怒鳴られました(笑)。

石川 そりゃそうでしょうね。

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