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消える残業代は5.6兆円? 働き方改革で消費低迷も

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NIKKEI STYLE

働き方改革で早く退社できるようになったのに真っすぐ家庭に帰らず、フラフラと街で時間をつぶす「フラリーマン」が話題です。アサヒ飲料の調査では会社員の7割が早く帰れるようになったものの、1割はフラリーマン化しているそうです。

政府は今月、働き方改革法案を閣議決定しました。法案通りに可決・成立すると、どんな理由があろうとも残業は年720時間が上限になります。これまで事実上、残業が青天井であった働く環境は様変わりします。

過重労働防止に欠かせない法改正ですが、フラリーマン化以上に働く側を悩ます問題もあります。それは残業代の減少です。日本の賃金制度は戦後長らく生活給を基本としてきました。夫が大黒柱として家族を支えるにはどのくらいの収入が必要かを考慮するものです。日本電気産業労働組合が1946年に労使交渉で勝ち取った電産型賃金制度が原型だといわれます。ただ高度経済成長が終わると経営環境は一変。成果主義が台頭するなど生活給は廃れていきます。

とはいえ所定内賃金だけでは家計がまかなえない世帯は多く、残業代は今も貴重な収入源です。そんな会社員にとって残業削減は一大事。「結局得するのは残業代を減らせる会社側ではないか……」。こんな不満が残業削減の取り組みにブレーキを掛けています。

浮いた残業代をどうするか。先進企業は社員も納得できる手を打っています。2013年度に働き方改革を始めたSCSKは節約できた残業代10億円を全額、残業削減の実績に応じて賞与として還元しました。工夫は奏功し、1人当たりの平均月間残業時間は08年度35時間から17年度16時間へと半減しました。

オリックスは今年6月に国内の主要グループ会社14社で「自分磨き制度」を新設します。浮いた残業代を原資に全社員に福利厚生ポイントを年6万円分支給します。フラリーマン化を防ぎ、早帰りで空いた時間を資格取得や語学学習などに有効活用してもらう狙いです。また、はるやまホールディングスは昨年4月から残業ゼロを実現した社員に「No残業手当」を月1万5千円支給しています。昨年度上半期の実績で1人当たり残業時間が前年同期比で15%減ったといいます。

残業代の行方は、個人の問題にとどまらず、日本全体の経済問題でもあります。みずほ総合研究所は残業の上限規制導入で年5.6兆円の残業代が消えると試算します。酒井才介主任エコノミストは「収入が減れば消費も滞る。名目GDP(国内総生産)ベースで年0.3%押し下げる。賃上げなど所得維持策が欠かせない」と強調します。

酒井才介・みずほ総合研究所経済調査部主任エコノミスト「負のスパイラルを抜け出すカギは生産性の向上」

残業時間規制は働き方改革法案の重要な柱です。現行の労働基準法も残業規制を規定していますが、特別の事情があり、労使協定を結べば事実上、青天井で残業ができました。働き方改革法案はこうした抜け道を許さず、時間外労働の上限を原則年360時間、月45時間とし、特別の事情があっても年720時間、月100時間を超えて働かせてはならないと定めます。残業時間規制は、個人の生活や企業経営、日本経済にどんな影響を及ぼすのか。みずほ総合研究所経済調査部主任エコノミストの酒井才介さんに聞きました。

――残業時間の減少はワークライフバランス(仕事と生活の調和)実現に欠かせませんが、収入面からみるとデメリットも大きいようですね。

「厚生労働省の『毎月勤労統計調査』によると、2017年平均で残業代(所定外給与)は現金給与総額の6%程度を占めています。業種別のバラツキも大きく、運輸業・郵便業や電気・ガス・熱供給・水道業では残業代が賃金に占める割合は10%を超えます。働く人にとって残業代が生活に重要な収入源になっています。残業代の減少が家計に響く世帯は少なくありません」

「法案通りに残業時間規制が導入されると、年720時間を超える残業が19年度以降禁止されます。中小企業や医師など一部は猶予期間も置きますが、いずれは全面的に規制対象となります。月にならすと毎月60時間が上限です。現在月60時間を超えて残業している雇用者は約643万人に上ります。雇用者全体の約11.3%に当たります。この643万人が月の残業を60時間未満に抑えた場合、どのくらい残業代が減るのか。賃金水準などを基に試算すると、1人当たり年86.7万円の収入減、総額では年間約5.6兆円に上ると分かりました。これは雇用者報酬総額の2.6%に相当します。報酬が減れば世帯はその分、消費を減らします。政府は3%の賃上げ目標を掲げていますが、目標を達成したとしても残業代の減少分で効果はほぼ打ち消されてしまいます」

――残業減少で浮いた人件費を企業が社員に還元してくれればいいのですよね。それは難しいのでしょうか。

「残業時間規制は、企業にとって労働投入量の減少を意味します。売り上げの減少など経営の圧迫する可能性もあり、そう簡単ではありません。先に紹介した試算の続きを紹介します。現在月60時間を超えて働いている約643万人が残業を月60時間未満に減らすと、日本全体で月約2億時間の労働時間が減ると見込まれます。所定労働週40時間(月160時間)で働く社員を新たに雇い、2億時間分を補うには約135万人の新規雇用が必要です。16~17年の1年間で増えた雇用者でさえ69万人にとどまっています。労働市場は逼迫しており、残業減少分を新規雇用で賄うのは相当厳しいでしょう。このままでは企業の生産量は減るしかありません」

「負のスパイラルを抜け出すカギは生産性の向上です。人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)などを活用し、業務を効率化するのはもちろんのこと、採算が取れない事業から手を引き、利益率が高い事業に人材を振り分けることです。ここ数年の働き方改革をみていると、企業は残業削減の掛け声は掛けるものの、一人ひとりの社員がどう生産性高く働けばよいのかを真剣に考えてきていないように思います。職場や個人に対策を丸投げではいけません。限られた人員でも企業活動や生産を維持・増やすために、企業は生産性向上に本腰を入れるべきです」

――働く側も変化を迫られそうですね。

「生産性向上で得た利益を社員に還元するとき、一人ひとりのインセンティブに働きかけようと生産性高く働ける社員により多く賃金を払うケースが広がると予測できます。個々の労働者は今まで以上にスキルを高める努力が必要です。誰でもできる定型的な業務はいずれAIに取って変わられます。残業が減って空いた時間を、資格取得や語学・ICT技術習得などに有効活用すべきです。1つの企業で勤め上げる時代もいずれ終わります。生産性高く働けるスキルを身に付けておけば、社内外を問わず賃金交渉の有力な材料となるはずです」

(編集委員 石塚由紀夫)

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