ファンづくりのマーケティングでは、試合以外のイベントを開いたりDJが試合を盛り上げたりと、サッカーのJリーグやバスケットボールのBリーグなどが先行する。
ファンの心つかむ3つの要素
法政大スポーツ健康学部の吉田政幸准教授は「Vリーグのような取り組みはスポーツマーケティングの最新理論にかなう」と指摘する。吉田氏は「社会的アイデンティティーによってスポーツのファンは生まれる」という。愛着はチームに自分を重ね合わせられたときに生まれるとし、それには3つの要素が必要だ。
1つ目は強い、話題性があるという「チームの評判」。2つ目は面白いなど「チームの独自性」。最後が同じ地域出身、同じ境遇、同じ趣味の選手がいるといった「チームと自分の類似性」だ。
対戦相手もあり、チームの成績は思うようにはいかないが、独自性は競技団体の工夫次第で成果を期待できる。吉田准教授は「日本人は逆境に打ち勝つストーリーが好き。うまく伝えれば共感・感動を得やすい」と指摘する。
16年に始まったバスケットボールのBリーグ、今年秋には新Vリーグに加え、卓球のTリーグも始まる。東京五輪を契機に、勝つだけのスポーツから、ファンを魅了するスポーツに変わる戦いは既に始まっている。
「黄色の上に赤のアイカラーをのせると発色がよくなりますよ」。コーセーのメーキャップアーティスト石井勲さんは3月上旬、国立スポーツ科学センター(東京・北)で、アーティスティックスイミング(シンクロナイズドスイミング)の日本代表選手、7人に春らしいオレンジ色のメークの仕方を指導した。
1カ月半後の大会に向け、2時間近くかけて何度も試し、衣装に合うものを作り上げた。意識するのは「表現の世界観を高めること」(石井さん)。衣装や楽曲などで表現される演技を化粧でサポートする。
石井さんはフィギュアスケートの日本代表のメークも指導している。技術だけでなく表現力を競う競技のメークで必須なのは流行への対応だ。いまや、選手を見れば、化粧の流行がわかるほど。
石井さんは「東京五輪に向けて和のテイストが来るかもしれない」と指摘する。平昌五輪では宮原知子選手がフリー演技での色気のある和化粧のような雰囲気のメークを採用し、4位入賞を果たした。選手たちが使うメーク用品は「ファシオ」や「コスメデコルテ」などの市販品。東京五輪での選手の露出は売れ行きにシンクロしそうだ。
平昌ではスノボのデザインが話題に
2月の平昌五輪では、実際に商品が動いた。スノーボード男子ハーフパイプ。戸塚優斗選手が競技に使ったボードがテレビに映し出されるや、製造元のヨネックスには問い合わせが相次いだ。このボードをデザインしたのは、若者の人気のアーティスト、MHAK(マーク)氏だ。