「ジュラシック・パーク」で映画に新しいCGの世界を切り開いたスティーブン・スピルバーグ。最新映画「レディ・プレイヤー1」では、VR(仮想現実)が当たり前になった世界を描く。VRやMR(複合現実)などを駆使した斬新なメディアアートを発表する一方で、筑波大学准教授として最新テクノロジーの研究・教育も行うマルチメディア・クリエーターの落合陽一氏に、映画を見て感じたVRの可能性を聞いた。
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VRに焦点を絞ると、「レディ・プレイヤー1」で描かれているVRは、かなり手あかのついた技術の延長として描かれています。そのおかげで、リアリティーのある世界観になっていると思いました。
「手あかのついた技術」というのは、スマートフォン(スマホ)の次ぐらいの技術のこと。例えば「脳に電気がつながって直接映像が見られる」みたいな技術はまったく描いていません。すごく軽量化されたVRゴーグルを着けているくらい。未来に飛びすぎてないから、我々がイメージしやすいんですよ。

実際、VRゴーグルは映画の舞台となっている2045年でも、まだ残っているんじゃないかな。裸眼型のVR機器をつくるのは大変なので、しばらくはゴーグルだと思います。
ただ、形は変わらなくても、微量のエネルギーできれいな映像が長時間、見られるようになっているはず。そうすると一日中、VRの世界にいても、バッテリーが切れない。そんな世界ではVRはスマホを代替するものになると思います。
VR普及の鍵を握るのはエンタメ
スマホに産業的なインパクトがないとは、今、誰も思ってないじゃないですか。ただ、スマホのアプリケーションを、スマホが登場する前に想像できた人はいないんですよ。それと同じで、VRを生かせるアプリケーションは、これから出てくる。
具体的には、医療やテレカン(telephone conferenceの略。電話会議)などで普及すると思います。あとは、オフィスにおけるデスクトップとノートパソコンの代替。VRゴーグルがあれば、ディスプレーがいらなくなる。ノートパソコンを持ち歩いていた人たちは、「なんであんな重いものを持ち歩いていたんだろう?」と思うに違いない(笑)。
普及の鍵を握るのは、まずはエンターテインメント。この分野が拡大すれば、デバイスを買う人が増えて、VR機器が普及する。その上で、視野全部に映像があるという状況が、徐々に仕事に活用されていくんじゃないかと思います。