血糖値を下げたい どんな運動が効率的?

日経Gooday

正解は、(3)両方を実践する です。

「有酸素運動」と「筋トレ」の併用がベスト

2017年9月に厚生労働省が発表した平成28年「国民健康・栄養調査」によると、「糖尿病が強く疑われる者」(糖尿病有病者)、「糖尿病の可能性を否定できない者」(糖尿病予備群)はいずれも約1000万人と推計されています。糖尿病は今や、れっきとした「国民病」といえるでしょう。

糖尿病は、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)を下げる機能がうまく働かず、血糖値が高いままになる病気です。自覚症状はほとんどありませんが、高血糖の状態が血管や神経にダメージを与え、やがて網膜症(悪化すると失明)、腎症(悪化すると透析が必要)、神経障害(悪化すると下肢などを切断することも)といった深刻な合併症を引き起こします。脳梗塞や心筋梗塞の発症リスクも高まります。

糖尿病になると、体の内部がじわじわとむしばまれ、やがて致命的な事態に至ります。このため糖尿病は「サイレント・キラー」(静かなる暗殺者)と呼ばれています。

糖尿病は血糖値が高いままになる病気ですから、治療の基本は血糖値を下げることになります。立命館大学スポーツ健康科学部教授の家光素行さんは、「血糖の糖分は、筋肉のエネルギー源の1つです。運動で筋肉を動かせば、糖の利用が増えて、血糖値が下がるので、運動療法は糖尿病対策の重要な柱となります」と話します。

実際、血糖値が高めで病院に行くと、医師から「運動をしましょう」とアドバイスされます。では、どんな運動がいいのでしょうか?

家光さんは、「有酸素運動と筋トレ、どちらも血糖値を改善します。2つを比較するなら、有酸素運動の方が効果が高い。ただ近年の研究から、理想は両方を併用することだと分かってきました」と話します。

下のグラフは、米国で行われた研究結果です。患者を4グループに分けて「有酸素運動」「筋トレ」「有酸素と筋トレ併用」「運動なし」に振り分け、効果を追跡しました。その結果、運動をした3グループの全てで、血糖値の指標であるヘモグロビンA1c(HbA1c)が下がりましたが、最も結果が良かったのは併用グループでした。

糖尿病患者262人を4グループに分け、筋トレ週3回(73人)、有酸素運動のみ(72人)、有酸素運動と筋トレ週2回(76人)、運動なし(41人)に振り分けた。運動をした3グループの運動時間は、どれも週150分程度にそろえてある。血糖値の指標であるヘモグロビンA1c(HbA1c)は「有酸素と筋トレ併用」>「有酸素のみ」>「筋トレのみ」の順に低下。このうち「有酸素と筋トレ併用」だけが、統計的に有意な差だった。(JAMA. 2010; 304: 2253-62.)

より多数の患者データを解析した別の研究でも、血糖値に対する運動の効果は「有酸素と筋トレ併用」>「有酸素のみ」>「筋トレのみ」の順に高くなりました(Diabetologia 2014; 57: 1789-97.)。

なぜ併用がベストなのでしょうか? メカニズムはまだよく分かっていませんが、たとえば「筋肉内のミトコンドリアの能力を高める効果が、有酸素運動単独より併用の方が高い」とか、「有酸素運動と筋トレは、主に働きかける筋線維の種類が異なるため、両方組み合わせると効果的」など、いくつかの説が提唱されています。

有酸素も筋トレも、やればやっただけ意味がある

ですが、ただでさえ運動はハードルが高いものです。そのうえ「有酸素も、筋トレも」と言われても、なかなか難しいと思う方が多いでしょう。

「ですからこのデータはむしろ、『有酸素と筋トレのどちらでも、やればやっただけ効果がある』と理解するのが現実的でしょう」と家光さんは話す。

こんなデータもあります。3万人以上の男性医療従事者を対象に、日ごろ行っている運動を調べ、糖尿病の発症率と比較した大規模な疫学研究では、「有酸素運動」と「筋トレ」のどちらをやった場合でも、糖尿病の発症リスクが下がっていました(Arch Intern Med. 2012; 172: 1306-12.)。

まずは自分の生活に取り入れやすいものから実行するといいでしょう。「今、運動習慣がない人にとっては、ごく軽いエクササイズでも、やらないよりはやった方が確実にいい。まずは、やりやすいところからやってみましょう」(家光さん)

(日経Gooday編集部)

[日経Gooday2018年4月9日付記事を再構成]

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