宇宙を旅した酵母の酒 宇宙食をつまみにロマンに酔う

土佐宇宙酒は銘柄によって味わいも様々
土佐宇宙酒は銘柄によって味わいも様々

「いつか宇宙を旅してみたい」。そんな夢を持つ人も多いだろうが、まだまだ宇宙旅行は夢の世界。だが、日本国内で宇宙を旅した酒が飲めると知ったら試してみたくなるのではないだろうか?今回は壮大なロマンを秘めた「土佐宇宙酒」についてご紹介しよう。

土佐宇宙酒とは高知で誕生した宇宙を旅した酵母で醸した日本酒だ。2018年3月、土佐宇宙酒を飲むイベントが開催されると聞き参加してきた。会場は東京・白金のプラネタリウムBAR。建物の天井部分がプラネタリウムになっている趣向を凝らしたバーだ。イベントを主宰したのは国際利き酒師の足立有美さん。国際利き酒師とは日本酒の専門知識だけでなく、国・地域によっても異なる文化や風習、好みにあわせて日本酒の楽しみ方を伝える専門資格だが、この資格を持つ足立さんが注目したのが宇宙酒だった。

土佐宇宙酒が誕生したのは2006年。高知県内の酒造会社に「酵母を宇宙に打ち上げる」という突拍子もない計画が持ち込まれたのは、その数年前だ。有志によって通称「てんくろうの会」が発足し、宇宙酒の計画が進められた。この提案に乗ったのが「高知県酒造組合」だ。18の蔵元が参加し、高知県産の酒米と酵母を使った宇宙酒造りがスタートした。ちょうど日本酒の消費量が減少していることが危惧されていた頃で、日本酒の消費拡大に結びつける狙いがあった。

土佐宇宙酒は以下のように定義してある。まず酵母は宇宙を旅した日本酒酵母を使うこと。現在は2005年に宇宙船ソユーズに搭載され、国際宇宙ステーション(ISS)に10日間滞在した後に帰還した酵母が使われている。酵母は単独で使っても、ほかの酵母と混合してもよい。次に原料米は高知県産酒造好適米「吟の夢」または「風鳴子」を100%使用すること。純米吟醸部門は精米歩合55%以下のもの、純米酒部門は精米歩合65%以下のものを使う。さらに香味は「土佐宇宙酒審査会」の官能審査に合格したものとしてある。

宇宙空間を連想させる宇宙酒のラベル

ちなみに、2006年の誕生当初は宇宙に行った酵母を使用するのみだったが、2009年からは酵母だけでなく、宇宙を旅した種もみから増やした酒米も使われている。高知県工業技術センターによると、宇宙を旅した酵母で醸した酒の方が元の酵母と比べて香気成分が高くなるという研究データも得られたそうだ。「宇宙を旅した酵母」と「宇宙を旅した酒米の子孫」から醸される日本酒。どうだろう、このスケールの大きさ。はてしないロマンを感じないだろうか?