かつて昭和の感覚が残った企業においては、転勤を繰り返すけれども最後は本人が望んだ地域=その多くは出身地に配属して定年を迎えさせるという慣行がありました。会社を信じてキャリアの選択肢を預けたとしても、最後にはきっちり報いてくれる、という暗黙の了解が機能している場合もありました。

しかし「暗黙」である以上、そういう運用は今はとても少なくなっています。独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によれば、転勤についてのルールが存在する企業は大企業で3割ほど。中小企業だと1割少しくらいの割合です。

もちろん転勤そのものには従業員の育成という側面もあります。また、独立行政法人経済産業研究所の分析によれば、転勤経験者の方がスキルも高く、年収も多く、かつキャリアへの満足度が高いという結果も出ています。

では仮に大企業に就職している場合、そのまま会社を信じてキャリアの選択肢を預けたままでよいのでしょうか。

大企業にいるほどキャリアリスクが見えづらくなる

企業に勤務している場合、私たちは大きく分けて3種類のキャリアリスクを考えなければいけません。

第一のリスクは、業界や企業そのものが立ちいかなくなった時のリスク。しかしこのリスクは大企業であればあまり問題ではなくなります。バブル崩壊後やリーマンショックの時、あるいは現在のフィンテック隆盛など、業界そのものが縮小するタイミングもありますが、全体としてみればレアケースと言えます。だから大企業に就職することでキャリア・リスクを回避することは決して間違った選択ではありません。

しかし第二のリスクが近年大きくなりつつあります。

第二のリスクは、平均寿命が延びたことによる無職期間の増大です。それに伴う収入の激減が、従業員であることの大きなリスクです。多くの会社では60歳定年を機に、年収が40%程度減少します。そして65歳になると再雇用が終わり、年金収入だけになります。もちろんそれから働く場所を探すことも可能でしょうが、選択肢は限られてきます。この加齢による収入の変化は、現時点ではほとんどの従業員に適用されます。そして会社はこのリスクに対してはほとんど支援してくれません。かろうじて401Kのような確定拠出年金導入に際しての資産運用教育などが支援としてあげられるくらいでしょう。

この二つのリスクはおそらくほとんどの方々が把握しておられると思います。そのため、金融資産を増やそうとする人も多いでしょう。

しかし実はもうひとつ、第三のリスクがあります。

次のページ
生涯年収という概念に疑問を持たない不思議
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら