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Food Selection

理系脳で五感に訴える料理空間づくり 米田肇氏の挑戦 ガストロノミー最前線(2)

2018/4/24

米田肇(よねだ・はじめ):近畿大学工学部電子工学科卒。電子部品メーカーで電子部品の設計に携わった後、26歳で料理の世界へ。日仏でのレストラン修業を経て、2008年独立。09年にはミシュラン史上世界最短で三ツ星を獲得

ここ数年、料理の提供法を模索し続けてきた。レストランの新しいかたち、料理の新しい鑑賞スタイルがあり得ないのか、と。

■レストランの足かせ

というのも最近、レストランに明るい未来が描けずにいるからである。クリエーティブな料理を提供しようと思うと、技術ある人材が不可欠で、高性能な調理機器も居る。空間の設えや維持にも多額を要し、優れた食材の原価はばかにならない。にもかかわらず、コモディティとしての価値設定しか許されない現実。クリエーティビティを追求するには足かせが多過ぎる。

「よく“原価率が高い”といった褒め方をされますが、それは流通の発想ですよね。クリエーティブに対する評価軸ではない」

料理がクリエーティブで語られるには、別の提供法や鑑賞法が必要になってくるのではないか。そう考えていただけに、ガストロノミー・インスタレーションの成功は一筋の光明だった。

米田シェフの口からよく飛び出すのが「ビッグバン」や「エントロピーの法則」という言葉。彼の料理は、理系脳によるロジカルな思考をベースに組み立てられている。いわば概念の表現であり、食材は絵画における絵の具や音楽における音色の意味合いに近い

■思考のうねりが料理になる

代表作の「地球」は、地球上のミネラルの循環を表現している。雨が大地を潤し、森や田畑を育み、その成分が川から海へと運ばれ、海の生育を促し、水は空へと蒸発し……という自然の摂理。

「料理のイマジネーションは子供時代にあります。山や川で遊びながら無意識に体感した大地の息遣いが発想の源泉ですね」

シェフの書棚には生命学、生物学、脳科学、宇宙科学、建築などの本がひしめく。疑問に思うと、問い詰めずにはいられないのは昔からの性癖だ。なぜ、草は生えるのか? なぜ、食べると幸せになるのか? 知識をインプットし、思考し、書き留める。彼のノートは思考のうねりの痕跡そのもの。

この頭脳活動こそが彼のクリエーションとするならば、レストランの皿にすんなり収まりきらないのもうなずける。

大阪 HAJIME
大阪市西区江戸堀1-9-11 アイプラス江戸堀1階
Tel 06-6447-6688
17:30~20:30LO
日曜休、その他不定休
テイスティングメニュー:スタンダード 4万2120円/ショート 3万240円/ベジタブルテイスティングメニュー 3万4020円

文=君島佐和子 写真=加藤純平

君島佐和子(きみじま・さわこ)
「料理通信」編集主幹。「Eating with Creativity」をキャッチフレーズに、食の世界の最新動向を幅広い領域からすくいあげている。

[日経回廊3 2015年8月発行号の記事を再構成]

前回掲載「百年後の人も幸せに サステナブルな食追究するシェフ」もあわせてお読みください。

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