乳酸菌と食物繊維を一度に おいしい!乳酸発酵漬け

日経ヘルス

自宅でも手軽に作れる「乳酸発酵漬け」
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野菜を塩水に漬け込むだけで、自宅でも手軽に作れる「乳酸発酵漬け」。発酵で増えた乳酸菌と、食物繊維が一度にとれ、お通じ改善効果も期待できる。

「乳酸発酵漬け」は、料理研究家の荻野恭子さんがロシアの保存食をヒントに考案した、キャベツなどの刻んだ野菜を塩水に数日漬け込んで作る保存食。漬物と微生物に詳しい東京家政大学の宮尾茂雄教授は、「ほとんどの野菜には乳酸菌が付着している。刻んで塩水に浸すと、浸透圧によって野菜に含まれるブドウ糖や果糖などが浸出し、それを栄養分にして、乳酸菌が増え、発酵が進む」と説明する。

乳酸菌が増えると、乳酸をたくさん作る。「その殺菌作用で食中毒菌や雑菌などは徐々に死滅する。そのため、生の状態よりも保存性が高まる」と宮尾教授。

発酵の際に変化する菌数の変化をイメージで表現。乳酸球菌や乳酸桿菌(L.plantarum、L.brevisなど)が増えるにしたがって、腸管出血性大腸菌O-157や雑菌などの一般細菌は4日~1週間ほどで死滅する。(データ:宮尾教授、モダンメディア;61,11,330-337,2015より改変)

発酵が進むと、乳酸のほかにアミノ酸、香り成分が産生され、まろやかな酸味やうまみが生まれる。世界各国の料理に詳しい荻野さんは、「ピクルスのように砂糖やスパイスをたくさん入れなくても、野菜のうまみで十分においしくなる」と話す。

野菜の食物繊維と、乳酸菌を一度にとれる「乳酸発酵漬け」は、おいしいだけではなく健康にもいい。「野菜を塩水に漬けて増える乳酸菌は、暑さ寒さなど過酷な条件で生き抜くタフな種類が多い。加熱せず食べれば、生きて腸まで届く可能性が高く、整腸効果が期待できる」(宮尾教授)。また、増えた乳酸菌をたっぷりとれば「加熱した乳酸菌でも整腸効果があるという報告も。免疫を高める作用も期待できる」(宮尾教授)。

塩水に漬けると乳酸菌が増えて発酵する
 漬け汁が白濁してきたら発酵が進んだサイン。「濁りの正体は乳酸菌そのもの。2~3日で乳酸菌は1ml当たり1000万~1億個以上に増えていると考えていい。乳酸菌が増えると乳酸が大量につくられるため、酸味も増す」(宮尾教授)。実際に漬け込んで4日目にリトマス試験紙でpHを調べてみたたところ、酸性に変わっていた。

3日で完成! 塩水に漬けるだけの超カンタン調理ガイド

「乳酸発酵漬け」に必要なのは、野菜と水、そして塩だけ。この割合さえ守れば、塩分控えめの浅漬けのような風味に仕上がる。

乳酸菌をしっかり増やし、発酵を成功させるポイントは2つ。

1つ目は、「塩水をたっぷり注ぐ」こと。材料がひたひたになるまで塩水が注がれていることが重要だ。「野菜からしっかり糖などを浸出させるためにも、塩水にはしっかり浸すこと。野菜の表面が空気に触れていると、カビが生える一因にもなる」(宮尾教授)。

2つ目は、白濁し始めるまでは冷蔵庫に入れず、「室温で保管する」こと。今の時期であれば、1~3日前後で漬けた汁が白く濁り始め、プツプツと泡がでることもある。これは、発酵が進んで、「炭酸ガスをだす乳酸菌が増えるため」(宮尾教授)だ。

白濁が全体に広がって、なめて酸味を感じるころには、酸っぱい香りも漂うようになる。そうなったら食べごろ。室温から冷蔵庫に移し、1カ月以内に食べきろう。

緑黄色野菜やキノコ、干し野菜にドライフルーツも、塩水に漬けるだけで「乳酸発酵漬け」が完成! 毎日の献立も時短で楽チンに。

「乳酸発酵漬けに使う塩水の基本は、水1カップに塩小さじ1。作りたい量が少量でも大量でも、この方程式で塩分を調整すれば失敗しません」(萩野さん)。野菜が水に浸りきらない時などもこの割合で塩水を作って足せばいい。塩分濃度は約3%。

「乳酸発酵漬け」に向く野菜は? 「ぬか漬けにできる野菜ならなんでもOK。キュウリやカブ、カリフラワー、ニンジンなど冷蔵庫で余っている野菜を漬けてみて」と荻野さん。キノコや干し野菜、レモンなどの果実も乳酸発酵漬けに向く。

「乳酸発酵漬け」に向かない素材は? 「野菜の中でもホウレン草やゴーヤーなどアクや苦みが強いものは不向き。レタスなど葉が柔らかいもの、レンコンなどでんぷん質が多いもの、海藻も向かない」(荻野さん)。

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