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「頑張れ精神」は日本の毒 ドラッカー流は知的に休む

ドラッカースクール ジェレミー・ハンター准教授(上)

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NIKKEI STYLE

「セルフマネジメント」研究の第一人者で、米クレアモント大学ピーター・F・ドラッカー経営大学院(ドラッカースクール)准教授のジェレミー・ハンターさん。ハンターさんによれば、ナレッジワーカー(知識労働者)の生産性を上げるには、「他者との関係性を良くすること」「十分な休息を取ること」が重要だ。働く人たちが「自分たちは安全だ」と思える環境をつくることが挑戦を生むための土壌となるという。

ナレッジワークは関係性が第一

白河桃子さん(以下、敬称略) ジェレミーさんはポスト工業化社会のナレッジワーカーの生産性について研究されていますが、工業時代の生産性とナレッジワーカーの生産性はどう違うのでしょうか?

ジェレミー・ハンターさん(以下、敬称略) とても面白い質問です。私は大学在学中、工場で働いていたことがあります。そこでは、ドアの部品である蝶番(ちょうつがい)を作っていました。いつまでに、何を、何個作らなくてはいけないかというゴールは明確で、誰にも邪魔されることなく、仕事に没頭できました。何時に出勤し、何時に退社するかも決まっていましたし、自分がその仕事をどれだけうまくできたかも見ればわかりました。

ナレッジワーカーの仕事はもっと複雑です。共有するナレッジそのものが複雑化しているとともに一人で完結する仕事が極端に減る、いわゆる「他者との関係性」が大きく影響するからです。にもかかわらず、日本もアメリカも、いまだに工業時代の生産性に対する考え方を引きずっています。

白河 ナレッジワーカーの仕事はイノベーションを起こすことですね。スティーブ・ジョブスのような1人の天才がイノベーションを起こすと思われがちですが、そうではなくて、皆の力、つまり関係性を通じてイノベーションを起こしていかないと、新しい、魅力ある商品やサービスは生まれない時代になっている。

ハンター そうです。グループワークが重要であり、それが良い信頼関係に基づくものでなければならない。衝突があっても良いのですが、それでもお互いに信じ、尊敬しあうべきです。

自分自身の反応をマネージする

ハンター 例えば、専門家とそうでない人がコミュニケーションする場合。専門家はたしかにその分野に精通していますが、だからといって、相手の理解度を試すような言い方をしたら、試された方はどう感じますか?

白河 すごく嫌な感じがすると思います。

ハンター そうでしょう? 相手をジャッジするような態度でコミュニケーションしていると、どうしても関係性が悪くなります。そしてその2人がもしお互いに生産的でなければならない立場だとしたら、どんな結果が生まれるかは容易に想像できますよね。関係性を良くするためには、自分のリアクションとして起きる感情や一方的な批判的感情を理解し、自らのリアクションをどうマネージしていくか、が大事なのです。これは企業のマネジャーにも言えることです。

白河 単に、みなさん仲良くしましょう、ではなく、考えて良好な関係性を維持するのはスキルの一種だということですね。

ハンター ピーター・ドラッカーはこう言っています。「自分をマネージできない人間は、他人をマネージできない」。マネジャーがマネージしなくてはならない相手はまず、自分自身なんです。

仮に私がとても怒りっぽい人間で、自分にとって都合の悪いニュースを伝えに来た部下を怒鳴ったりしたら、どうなると思います?

白河 悪いことが起きても、部下は二度と報告しなくなるでしょうね。

ハンター その通り。感情や人間関係の質は、生産性に直に影響します。正確な情報が集まらずに、どうやって正しい意思決定ができるのでしょうか?

白河 上司が怖くてトラブルを報告できない。これは起こりがちなことですが、このような状況を放置するのは、企業にとってもリスクが高い。状況がどんどん悪化して、気がつくと手が付けられなくなってしまいます。

日本でも今、ようやく「リモートワーク」を導入し始める会社が増えてきましたが、ここでも重要なのは、人と人との関係性なんです。導入しようとすると、たいていミドルマネジャーあたりから「見てないとサボる人が出てくるのではないか?」という声が挙がる。上司が部下を信頼できないような職場では、当然、生産性も下がります。

関係性を良くするスキル

ハンター 信頼関係などナレッジワーカーの生産性を高める要素は、決してバランスシートには表れませんが、すべてに影響します。

白河 職場の関係性を良くするのも一種のテクニックだとしたら、どうすれば、そのようなテクニックを獲得できるのでしょうか?

ハンター やってもやっても悪い結果しか生まないのだとしたら、それは何かが間違っています。まずは、結果をあるがままに見ましょう。次に本当に欲しい結果は何か、を考える。そのギャップを埋めるために何をしたらいいのかを考え、行動に移すことです。

現実をありのままに見ることは、とても大事です。防御的になると、人は見たいものしか見なくなる。

私はエグゼクティブをトレーニングする仕事もしていますが、受講者にとっての気づきの第一歩は、「自分がいかに決まった反応をしているか?」に気づくことなんです。自分はいつも怒っているなとか、悪い方に考えがちだとか。自分のリアクションのパターンに気づけば、それが相手にどのような影響を与えているのか、に思いをはせることもできます。怒鳴って相手を従わせるのは簡単ですが、それはマネジメントとして最悪の手法です。

2つめに重要なのは、休むこと。日本はあまりに「とにかく頑張れ」社会なので、頑張っても、頑張っても、「まだまだ頑張れ」と言われてしまう。私が思うに、日本人は頑張るのではなく、休むことを覚えた方がいいですね。休息は効果的な行動を起こすための基本であり、神経系と根本的に関係があるのです。

セミナーでもよく話すのですが、人間の神経系には、刺激をマネージできる範囲があります。これを「ゾーン・オブ・レジリエンス」という。心理学ではレジリエンスを「(精神的)回復力」や「復元力」と訳します。

ゾーン・オブ・レジリエンスは自分自身で回復可能な範囲。ところが頑張りすぎると、その枠を超えて過覚醒の状態になります。すると、例えば眠れなくなる。

眠れないと、不安が募ったり、怒りっぽくなったり、視野が狭くなったりします。もちろん、体調に異変も生じる。健康を害してもなお、限界を超えたエリアに留まり続けると、今度は突然、エネルギー不足で走れなくなってしまいます。つまり、過覚醒状態から覚醒していない状態へと急速に落ちていくのです。

白河 一種の燃え尽き症候群ですね。自分は大丈夫だと思っても、体がいうことをきかなくなる。

ハンター うつ状態にも陥り、孤独感・無力感に打ちひしがれ、誰にも会いたくなくなってしまう。日本人は文化的にここに陥りやすい。米国人もそう。両国は何十年もの間、国中がゾーン・オブ・レジリエンスの外側で走り続けているようなものです。

「とにかく頑張れ」のメンタリティーは日本の毒

白河 ゾーン・オブ・レジリエンスの内側で生活することが、生産性を高めることにもつながるんだ、という認識を広めていかないといけないですね。 

ハンター そう思います。「とにかく頑張れ」のメンタリティーは日本の毒。自己犠牲で頑張りすぎるのはあまりに非健康的であり、心身をもっと大切にしなければ、21世紀で成功できない。

実は、休むことに罪悪感を覚える人は私の米国のクライアントにも多いです。特にエグゼクティブワーカーや、それを目指す学生たち。私のクラスでは、そういう人たちにどうすればゾーン・オブ・レジリエンスの内側に戻れるのか、を教えています。

白河 具体的には、どんなことを心がければいいんですか?

ハンター 基本は、十分かつ質のいい睡眠をとること。睡眠に関してはよく、5つのことを話します。午後2時以降はなるべくカフェインを摂取しない。できればお酒も飲まない。お酒には睡眠導入の効果もありますが、半面、睡眠の質を下げてしまいます。パソコンのブルーライトを浴びるのも、寝る前は避けた方がいい。

白河 寝室にスマートフォンを持ち込むな、とよく言いますね。

ハンター その通りです。それと、お風呂に入るのはいい。お風呂は日本人にとっての秘密兵器ですよ(笑)。加えて、朝のエクササイズ。とにかく、よく眠れて、ゆったりとした朝を迎えること。これが基本です。

もう一つ付け加えるとすると、抹茶も日本の秘密兵器といえるでしょう。私はコーヒーよりも好きです。神経質になりすぎることなく落ち着いて集中力を持続するのに役立つのです。これは私の友人の脳科学者も薦めています。

時間より目的が大事

白河 日本では今、働く時間を法律で管理しようとしていますが、必ず「もっと働きたい」という声が挙がります。「私たちは好きで仕事をしているのだから、もっと働かせてくれ」と。どう思われますか?

ハンター 単に労働時間を短くすればいいというシンプルな問題ではないと私は思います。「なぜ私たちはこのように働かなくてはいけないのか?」そして「何を達成したいのか?」「そのためにもっといい方法がないだろうか?」に注目する方がもっと有益でしょう。

接待文化は特に毒ですね。私のクライアントにもいるのですが、彼女は毎晩のように2時3時まで付き合いをしなくてはならず、このスケジュールのために休息がとれないばかりか、新たなことを学んだり開拓したりすることさえもできません。さらに厄介なことに、彼女の仕事はビジネスにイノベーションを起こすことなのです。極度の疲労を継続的に感じている中で、どうやってイノベーションが生まれるというのでしょう。毎晩のように飲み歩くことが、望んだビジネスの結果を達成するために本当に必要なのでしょうか? もっと他にやり方があるのではないでしょうか?

重要なのは、働く人たちが「自分たちは安全だ」と思える環境を作れるかどうか。安全だから挑戦できるわけで、安全だと感じられなければ、人は失敗を恐れて何も挑戦しなくなります。

白河 たしかに、挑戦できることが大事ですね。グーグルが2012年から、労働生産性を向上させるために開始した「プロジェクトアリストテレス」でも、最も生産性の高いチームは心理的安全性の高いチームである、という結果が出ています。そこには挑戦できる環境があるんですね。

ハンター そうです。それはゾーン・オブ・レジリエンスとナレッジワーカーの生産性における私の考えを説明する良い例です。失敗したら破産して敗者の烙印(らくいん)を押されるような社会ではイノベーションも起こらないし、スタートアップも生まれて来ないでしょう。

(下編の「『不快な変化』こそチャンス ドラッカー流働き方改革」では、自分が直面した変化にどう対応するか、どう感情と向き合い、コミュニケーションしていくべきか、などについてお聞きします)

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「『婚活』時代」(共著)、「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)。

(ライター 曲沼美恵)

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