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カリスマの直言

市場揺らす米中貿易戦争懸念 行方を読む(武者陵司) 武者リサーチ代表

2018/4/16

米中は貿易戦争を回避できるのか。トランプ大統領(右)と習近平主席=AP
「米中の貿易問題を考える上で、最近起きたアジアでの変化を振り返ることが重要だ」

 米国トランプ政権の通商政策を巡る強硬姿勢が世界の金融市場を揺るがしている。最大の標的は中国で、米国が知的財産権の侵害を理由に高関税をかける輸入品のリストを発表。これに対抗して中国も報復措置をすぐに公表し、米中貿易戦争への懸念が一気に高まった。市場では米中の本格的な衝突を危ぶむ声も聞かれるが、果たしてそうだろうか。

 この問題を考える上で、最近起きたアジアでの変化を振り返ることが重要だ。韓国・平昌五輪の開催以降、南北首脳会談、米朝首脳会談が立て続けに実現する見通しとなったほか、北朝鮮の金正恩委員長が北京を電撃訪問して中国の習近平国家主席と会談するなど、北朝鮮を巡る情勢が急転直下の動きを見せた。

■カギはトランプ政権が握る

 これらの変化のすべてはトランプ政権のイニシアチブによって起きたということがポイントである。北朝鮮と中国のマヌーバー(策略)は核・弾道ミサイル問題を巡る米国の圧力の高まりに対する対応にすぎない。今後の情勢展開のカギはトランプ政権が握っている。米国を射程に入れた核・弾道ミサイルの完成前に北朝鮮が対話を模索し始めたということは、経済制裁と米軍による軍事威圧に、金正恩氏が耐えられなくなった証左といえる。

 また、米中貿易問題において中国は譲歩をせざるを得ない状況におかれる。トランプ政権の手口は威圧により相手から譲歩を引き出す「ディール戦略」である。北米自由貿易協定(NAFTA)交渉でも、鉄鋼とアルミニウムの追加関税問題でも、当初の要求は大きいが着地点は比較的穏やかな内容になりつつある。中国に対する1000億ドルの対米貿易黒字削減要請、知的財産侵害を理由に最大600億ドル相当の輸入品に高関税をかける案もその類いであろう。

■米中は貿易戦争に至らない

 中国はそれを突っぱねることはできず、貿易戦争に至らないよう決着させるとみられる。米中貿易において中国は圧倒的に受益者であり、どのような譲歩も全面戦争よりは得だからだ。2017年の米国のモノとサービスを合わせた貿易収支の対中赤字は3371億ドルで、中国の国内総生産(GDP)の3%に相当する。

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