マニアも出現 「ご当地ランチパック」はヒットの宝庫
種類豊富な具材がしっとりふわふわの食パンに包まれた山崎製パンの「ランチパック」。総菜系からスイーツ系まで幅広い味を手軽に楽しめる菓子パンとして、年間で約400億円を売り上げる、マンモスブランドだ。
1984年の発売当時は、「ピーナツ」「小倉」といった王道品4種類のみ。だが現在では、限定品を合わせると約50アイテムを常時展開。年間では150種類もの新商品が登場するのは驚きだ。なかでも、地域の食材や名物を反映させた限定品である「ご当地ランチパック」は、思わず目を見張るユニークな商品の宝庫。手に入れるために全国行脚をするマニアもいる。
「大きな転換期は2006年だった」と、多くの人に受け入れられるようになった理由を語るのは、営業統括本部マーケティング部の斉藤高志氏。ランチパックは当初、食パンの需要を喚起することを目的に開発され、あまたある菓子パンカテゴリーのなかの一つにすぎなかった。だが、06年によりしっとりとした食感を追求して専用食パンの配合や製法を大刷新し、同時に中に入れる具材のバリエーションも強化。CMなどを通じて打ち出した「ケータイするランチ」という斬新なコンセプトが受け、一躍主力商品となった。
さらに、ご当地ランチパックの開発も加速。もともと同社では、各地にある工場ごとに独自にマーケティングを行って製品開発ができる仕組みがあり、ご当地ランチパックの開発にもこれをフル活用している。各工場が、地域のニーズや特性に合わせて大きな裁量を持って開発を進められるため、フットワークが軽く製品化までのスピードは非常に速い。
「一番多いのが、地域の食材や伝統食、B級グルメを用いた地産地消系、それに加えて、地元の企業や大学とのコラボレーションの引き合いも多い」と斉藤氏。限定された地域や狭いニーズを狙って作れるため、香川の「釜玉うどん風」や愛知の「あんかけスパゲッティ風」といった驚きの味にもチャレンジできるのはランチパックの強みだ。
また、一部エリア限定で発売した、山梨の伝統銘菓がモチーフの「桔梗信玄餅風」は人気沸騰。その後全国デビューを果たすなど、大手メーカーのパンにも実はご当地発ヒットが隠れている。ランチパックは累計で1200以上の商品が誕生しており、今後もここから思わぬ全国ヒットが生まれるかもしれない。
注)掲載している商品は過去の限定品の例
(ライター 永浜敬子)
[日経トレンディ2018年5月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。