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非モテ男女は黒衣で黒い麺を 4月14日ブラックデー

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NIKKEI STYLE

2月14日は好きな男性にチョコレートを贈る「バレンタインデー」、そして3月14日はそのお返しに男性が女性にお菓子を贈る「ホワイトデー」。では、4月14日は?

答えは「ブラックデー」。もちろん、日本の習慣ではない。お隣・韓国ではバレンタインデーやホワイトデーに何もなかったさびしい男女が黒い服を着て集い、黒い「ジャジャン麺」を食べる日なのだとか。

ジャジャン麺とは、豚肉とたまねぎを炒め、黒みそで味付けしたソースをゆでた麺にかけたもの。キュウリの千切りが添えられているのが一般的である。

私がこの話を聞いたのはフィリピンの語学学校。というのも、英語が公用語で物価の安いフィリピンには韓国資本の英語学校がたくさんあり、授業料が激安ゆえ、韓国人大学生が多数留学しているのだ。私も6年ほど前に留学し、生徒の90%が韓国人という語学学校で彼らと机を並べたのだった。

学校の寮は3食付きで、当然のように毎食韓国料理。そして、毎週金曜日の晩は必ずジャジャン麺が出た。生徒たちはそれを心待ちにしているようだった。私が滞在していたのがたまたま4月下旬ごろだったからか、寮の食堂で一緒になった韓国人大学生がブラックデーの話を教えてくれたのだった。

「で、今年のブラックデーはどうやって過ごしたの?」と私が聞くと、泣くようなポーズをしながら「今年もジャジャン麺食べたよ~!」と彼。

チョコレートを1個ももらえないくらいで落ち込んでしまう (それゆえ義理チョコができた?) 日本人に対して、堂々と「非モテ」をアピールして、それこそ「ブラックジョーク」として笑い飛ばしてしまう韓国人。お隣の国だけどメンタリティーがぜんぜん違うなぁと感心したことを覚えている。

さて、日本のコリアンタウンではどうか。ブラックデーは盛り上がっているのだろうか。チーズタッカルビブームで再び盛り上がる新大久保にも近い、新宿区歌舞伎町の、その名も「ジャジャン麺ハウス」を訪れた。

「ブラックデーは韓国で15~16年くらい前にブームになりました。ホワイトデーの『白』に対して『黒』ということでブラックデー。黒い食べ物はほかにありませんからジャジャン麺が食べられるようになったのだと思います。5~6年くらい前からは日本人のお客さんもブラックデーにジャジャン麺を食べにいらっしゃるようになりました。今では4月14日に食べにくるお客さんのほとんどが日本人ですね」と同店のイ・チョンスクさん。

韓流好きな日本人の間ではブラックデーはもはやおなじみのイベントになっているようだ。

ちなみに韓国のバレンタインデーやホワイトデーの習慣は日本と同じ。バレンタインデーは世界的には「恋人たちの愛の誓いの日」で、贈るものはチョコに限らず、女性から男性へというキマリもない。女性から男性にチョコを贈る、その1か月後にはお返しをするという日本独特の習慣は韓国にも広まり定着しているとのこと。

「韓国では、ブラックデーのさらに1カ月後に『ローズデー』というのもあるんですよ。この日はカップルがお互いにバラの花束を贈りあう日。ですから、ブラックデーはシングルの男女が来月にはバラをもらえるといいなと思いながら恋人探しをする日でもあります」

なるほど、ブラックデーは「非モテ」を自虐的に笑い飛ばすだけでなく、「合コン」や「カップリングパーティ」という前向きな意味もあるらしい。

イさんによれば、韓国では1年12カ月すべての14日に、恋人たちの記念日があるそうな。「キスデー」「シルバーデー」「グリーンデー」「ミュージックデー」「ワインデー」「オレンジデー」「ハグデー」「ダイアリーデー」と、なんとなく何をする日かわかりそうなもの。

さらには、交際をスタートしてから「22日記念」「49日記念」「100日記念」「300日記念」などの記念日もあり、韓国のカップルは忙しい! うっかり忘れて彼女に怒られないよう韓国人男性は記念日までをカウントダウンしてくれるスマホアプリが必須との話もある。

さて、恋人のいない男女が傷をなめあいながら(?)、未来の恋人を見定めながら食べるジャジャン麺とはいったいいかなる食べ物なのか。

「ジャジャン麺はもともと中華料理ですが、いまでは韓国人みんなが大好きな国民食です。現在、国際空港がある仁川は100年以上前から港湾の街として栄えていて、そこに中華街があります。日本の横浜と同じですね。そこで働く中国人が食べていた麺料理が広まったのが始まりといわれています」

ルーツは外国にあるが国民食になるほど愛されているといえば、日本ではラーメンやカレーのようなものだろうか。フィリピンの寮で毎週ジャジャン麺が出ていた理由も分かった気がした。

港湾労働者たちが食べていたのは日本の中華料理店でもポピュラーな、中国北部の家庭料理「ジャージャー麺」(ジャージャン麺ともいう)。日本にも旧満州から持ち帰って独自のアレンジが加えられた「盛岡じゃじゃ麺」があるが、それと同じようにジャジャン麺も韓国独自の発展を遂げていったようだ。

味もかなり違い、イさんによれば「韓国のほうが甘い」。味の違いは中国のジャジャン麺はトウバンジャンやテンメンジャンを使うのに対し、韓国ではチュンジャン(春醤)という黒豆からできたみそを使っていることによる。

しかし、いちばんの違いはやはり「色」だろう。中国のジャージャー麺や盛岡じゃじゃ麺はどちらかというと「茶色」だが、ジャジャン麺は「黒」。この色こそ、ジャジャン麺が韓国の食のなかで特別な存在になっている理由だと思う。

というのも、ジャジャン麺は映画やドラマに登場する料理ナンバーワン。「ジャジャン麺ハウス」の壁にも韓国人女優が豪快にジャジャン麺をすする写真がいくつも張られている。

ジャジャン麺は黒いので、食べると口のまわりが黒くなってしまう。初期のデートには不向きだ(イカ墨パスタのようなものか?)。ゆえに映画やドラマでは、ジャジャン麺を食べるシーンは1つのメタファーとして使われる。

たとえば、カップルになりそうな男女がジャジャン麺をがっつくように豪快に食べていれば、「あ、このふたりは実はお互いを異性として意識していないんだな」という意味だったり、話の流れからは逆に「あ、このふたりは一線を超えたんだな」という意味になったりもする。

「今年もジャジャン麺を食べることになりそう」といえば、「彼氏(彼女)はいません」というアピールだ。

また、恋愛とは関係なく映画やドラマにもよく登場する。イさんによれば、ジャジャン麺は韓国では「ペダル(配達の意味、つまりは出前)」でよく食べるものらしい。そういえば刑事ドラマにも登場していたし、OLがオフィスのデスクに古新聞を敷いた上でジャジャン麺を食べていたシーンも見たことがある。

つまり「外に食べに行けないほど、むちゃ忙しい!」「気合い入ってます!」という意味にも使われる。今まで見た韓国映画やドラマでももう一度見直すと「思い返せば、あれはジャジャン麺だった」というシーンがあり、その意味を知ると解釈も少し変わるかもしれない。

さて、ここまででジャジャン麺に対する興味もちょっとは高まっていただいたかと思う。が、ジャジャン麺は韓国人のソウルフードではあるものの、このようなルーツゆえ、「韓国料理店」では食べられない。

ジャジャン麺は「中華料理店」、あるいは「配達(ペダル)」で食べるものである。こちらの「ジャジャン麺ハウス」も「韓国中華料理」の店。新大久保・新宿界隈のコリアンタウンでも韓国中華の店は2~3店舗しかないとのこと。「ジャジャン麺を出している韓国料理店ももしかしたらあるかもしれませんが、手打ちの麺のおいしさを味わえるのはやはり中華料理店ならでは、だと思います」とイさん。

私も中国人の料理人が手打ちで作っているというジャジャン麺をいただいてみた。中国のジャージャー麺の中華麺とは違い、ちょっと太め。どちらかというとうどんに近い手打ち麺はモチモチとした食感でうまい。小麦粉をこねて一晩寝かせ、熟成させてから伸ばして切るのがその秘密とのこと。

韓国料理というと「辛い」というイメージがあるが、辛さはまるでない。「子どもから大人までみんなが大好きな国民食」という意味がよく分かった。

別皿に盛られた「生のざく切りたまねぎ」と「たくあん」も甘いジャジャン麺のいい箸休めになっている。どの店で食べてもこのつけ合わせがついてくるのがお約束らしい。カレーに福神漬け、牛丼に紅しょうがみたいなものだろうか。これも中国のジャージャー麺や盛岡じゃじゃ麺とは違う点である。

こちらのお店にはもう1つ名物があり、それは「チャンポン」。これまた福建省の料理をベースにしながらも長崎で生まれた「ちゃんぽん」と名前は似ているが、まるで違う。長崎ちゃんぽんは白濁したスープであるのに対し、こちらは真っ赤。魚貝から出たスープを麺がしっかり吸って、唐辛子の辛さのなかにもうまみが感じられ、とてもおいしかった。

そうそう、ジャジャン麺を食べるマナーが2つある。ひとつは、イさんが教えてくれた。大きな口で豪快にすすって食べること。「ジャジャン麺ハウス」の壁に張られていたドラマや映画の写真の上品そうな女優さんも大きな口を開けて食べていたっけ。

もう1つは、よくかき混ぜて食べること。これはフィリピンの語学学校の同級生が教えてくれた。毎週金曜日のジャジャン麺の日、私が食べるのを見て「混ぜ方が足りない!」といつもダメ出しされた。最終的には私の皿を奪って「もう、しょうがないなぁ。こうやるんだよ」といいながらジャジャン麺をかき混ぜてくれた。

男性にそんな世話を焼かれたことがない私、一瞬「惚れてまうやろ」と思った。もちろん、相手は私が産んでいてもおかしくない年齢の大学生ゆえ、恋愛ドラマのような展開にはならなかったが。

(ライター 柏木珠希)

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