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非モテ男女は黒衣で黒い麺を 4月14日ブラックデー

韓国ジャジャン麺のルーツ、中国のジャージャー麺は肉味噌の色が「茶色」

味もかなり違い、イさんによれば「韓国のほうが甘い」。味の違いは中国のジャジャン麺はトウバンジャンやテンメンジャンを使うのに対し、韓国ではチュンジャン(春醤)という黒豆からできたみそを使っていることによる。

しかし、いちばんの違いはやはり「色」だろう。中国のジャージャー麺や盛岡じゃじゃ麺はどちらかというと「茶色」だが、ジャジャン麺は「黒」。この色こそ、ジャジャン麺が韓国の食のなかで特別な存在になっている理由だと思う。

というのも、ジャジャン麺は映画やドラマに登場する料理ナンバーワン。「ジャジャン麺ハウス」の壁にも韓国人女優が豪快にジャジャン麺をすする写真がいくつも張られている。

ジャジャン麺は黒いので、食べると口のまわりが黒くなってしまう。初期のデートには不向きだ(イカ墨パスタのようなものか?)。ゆえに映画やドラマでは、ジャジャン麺を食べるシーンは1つのメタファーとして使われる。

たとえば、カップルになりそうな男女がジャジャン麺をがっつくように豪快に食べていれば、「あ、このふたりは実はお互いを異性として意識していないんだな」という意味だったり、話の流れからは逆に「あ、このふたりは一線を超えたんだな」という意味になったりもする。

「今年もジャジャン麺を食べることになりそう」といえば、「彼氏(彼女)はいません」というアピールだ。

また、恋愛とは関係なく映画やドラマにもよく登場する。イさんによれば、ジャジャン麺は韓国では「ペダル(配達の意味、つまりは出前)」でよく食べるものらしい。そういえば刑事ドラマにも登場していたし、OLがオフィスのデスクに古新聞を敷いた上でジャジャン麺を食べていたシーンも見たことがある。

つまり「外に食べに行けないほど、むちゃ忙しい!」「気合い入ってます!」という意味にも使われる。今まで見た韓国映画やドラマでももう一度見直すと「思い返せば、あれはジャジャン麺だった」というシーンがあり、その意味を知ると解釈も少し変わるかもしれない。

さて、ここまででジャジャン麺に対する興味もちょっとは高まっていただいたかと思う。が、ジャジャン麺は韓国人のソウルフードではあるものの、このようなルーツゆえ、「韓国料理店」では食べられない。

ジャジャン麺は「中華料理店」、あるいは「配達(ペダル)」で食べるものである。こちらの「ジャジャン麺ハウス」も「韓国中華料理」の店。新大久保・新宿界隈のコリアンタウンでも韓国中華の店は2~3店舗しかないとのこと。「ジャジャン麺を出している韓国料理店ももしかしたらあるかもしれませんが、手打ちの麺のおいしさを味わえるのはやはり中華料理店ならでは、だと思います」とイさん。

私も中国人の料理人が手打ちで作っているというジャジャン麺をいただいてみた。中国のジャージャー麺の中華麺とは違い、ちょっと太め。どちらかというとうどんに近い手打ち麺はモチモチとした食感でうまい。小麦粉をこねて一晩寝かせ、熟成させてから伸ばして切るのがその秘密とのこと。

韓国料理というと「辛い」というイメージがあるが、辛さはまるでない。「子どもから大人までみんなが大好きな国民食」という意味がよく分かった。

「ジャジャン麺ハウス」のもう1つの名物の「チャンポン」 ジャジャ麺とのハーフ&ハーフが人気とのこと

別皿に盛られた「生のざく切りたまねぎ」と「たくあん」も甘いジャジャン麺のいい箸休めになっている。どの店で食べてもこのつけ合わせがついてくるのがお約束らしい。カレーに福神漬け、牛丼に紅しょうがみたいなものだろうか。これも中国のジャージャー麺や盛岡じゃじゃ麺とは違う点である。

こちらのお店にはもう1つ名物があり、それは「チャンポン」。これまた福建省の料理をベースにしながらも長崎で生まれた「ちゃんぽん」と名前は似ているが、まるで違う。長崎ちゃんぽんは白濁したスープであるのに対し、こちらは真っ赤。魚貝から出たスープを麺がしっかり吸って、唐辛子の辛さのなかにもうまみが感じられ、とてもおいしかった。

そうそう、ジャジャン麺を食べるマナーが2つある。ひとつは、イさんが教えてくれた。大きな口で豪快にすすって食べること。「ジャジャン麺ハウス」の壁に張られていたドラマや映画の写真の上品そうな女優さんも大きな口を開けて食べていたっけ。

ジャジャ麺はよくかきまぜて食べるのが流儀

もう1つは、よくかき混ぜて食べること。これはフィリピンの語学学校の同級生が教えてくれた。毎週金曜日のジャジャン麺の日、私が食べるのを見て「混ぜ方が足りない!」といつもダメ出しされた。最終的には私の皿を奪って「もう、しょうがないなぁ。こうやるんだよ」といいながらジャジャン麺をかき混ぜてくれた。

男性にそんな世話を焼かれたことがない私、一瞬「惚れてまうやろ」と思った。もちろん、相手は私が産んでいてもおかしくない年齢の大学生ゆえ、恋愛ドラマのような展開にはならなかったが。

(ライター 柏木珠希)


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